キヤノンの工場建設を巡る法人税法違反(脱税)事件で、逮捕された大分市のコンサルタント会社「大光」社長・大賀規久容疑者(65)は、口利きビジネスを展開するために、地方政界や国税、警察にも交友を広げていた。
事件では、キヤノンの御手洗冨士夫会長(73)との親密な間柄をテコに大手ゼネコン鹿島などからリベートを受け取っていたとみられるが、虚実ない交ぜになった人脈を相手によって使い分け、誇示していたという。
「キヤノンの工場建設に絡む事業を請け負う会社を作りたい」。2002年に徳島県知事に対する贈賄容疑などで逮捕され、有罪が確定したコンサルタント会社「業際都市開発研究所」の尾崎光郎元代表(63)は1990年の「大光」設立時、大賀容疑者にこう誘われて出資に応じた。2人はこの数年前からの知り合いだった。公共工事の口利きビジネスでは手を組む関係にあった。
大賀容疑者の地元関係者によると、同容疑者の公共工事への口利きは「30年以上前から知られていた」といい、政治家とのパイプ作りにもいそしんでいた。大分県の広瀬勝貞知事は記者会見などで、大賀容疑者について「選挙でお世話になったり、キヤノンのことを教えてもらったりした」と話している。
大光の設立後数年で、尾崎元代表は大賀容疑者とたもとを分かつ。元代表の説明によると、大賀容疑者が元代表の名前を勝手に使って業者から数百万円の口利き料を集めたことがわかったためだという。
大賀容疑者が、政治家とともに人脈作りに力を注いだのは国税と警察だった。
大光グループの建設関連会社「ライトブラック」(大分市)と内装工事会社「匠(たくみ)」(東京都千代田区)の監査役には、大分県を管轄する熊本国税局長を92年まで務めた税理士が就任していた。退職後も「ノンキャリアのドン」と呼ばれた大物。大賀容疑者は知り合いの業者に「税務署が入った時のために、おれの名刺を金庫に張っておけばいい」と吹聴することもあったという。
元国税局長は「現役時代も含め何度か食事をしたことはある。匠には出資して監査役にも入ったが、ライトブラックは勝手に名前を使われた」と話した。
警察人脈のキーマンは、80年代に大分県警本部長を務めたキャリア官僚。元本部長が退職後に東京・永田町に警備会社を設立するとフロアの一部を間借りし、匠などの事務所を置いた。元本部長は約10年前に死去したが、現在も賃貸関係は続いている。
大賀容疑者は周囲に、元本部長以外にも複数の警察OBの名前を挙げ、「親しくしている」と言うことがあったという。しかし、名指しされたOBらは「御手洗さんとゴルフをした時に、顔を見たことがあるぐらい」「1回会っただけ。どんな人だったのか覚えていない」と一様に親密ぶりを否定している。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090214-OYT1T00552.htm