キヤノンの工場建設を巡る法人税法違反事件で、逮捕された大分市のコンサルタント会社「大光」社長・大賀規久容疑者(65)が、工事を受注した大手ゼネコン鹿島がキヤノンに対し設計内容を提案する場などに複数回同席していたことがわかった。
両社の間を直接取り持つ中で、工事代金や下請け業者の選定に注文を付けようとしたとみられる。キヤノンは大賀容疑者が鹿島の下請けで請け負った業務について「一切承知していない」としているが、現場では公然と影響力を行使していた実態が明らかになった。
鹿島関係者によると、大賀容疑者が出席したのは、鹿島が同容疑者の口利きで受注したとみられる大分、川崎、宇都宮の計4事業所の建設工事のうち、大分の2工場の打ち合わせ。鹿島はこの二つの工事を計約430億円で元請けした。
デジタルカメラ工場は2004年4月に着工し、同年10月に1期工事が完了。プリンターカートリッジ工場は06年3月に着工し、翌年1月に1期工事を終えた。大分市内ではキヤノンと鹿島の間で工事に関する会合が頻繁に持たれたが、大賀容疑者は、設計の細部をキヤノン側に提案するための会合などに何度も顔を出していたという。
鹿島からみると、大光などは外構工事や厨房(ちゅうぼう)設備工事など一部の下請け業者で、こうした席では本来は部外者。鹿島関係者は「大賀さんはキヤノンの代理人という認識。大賀さんが折衝の場で意見を述べても仕方ないと思っていた」と話しており、大賀容疑者が席を外すよう求められることもなかったという。
一方、大賀容疑者は鹿島の大分営業所にも何度も姿を見せ、キヤノンに提出する前の見積書を提示させ、下請け業者の指定や追加工事を盛り込むよう要求していた。社員が拒むと、「次の工事は取らせないぞ」と語気を強めることもあったという。
鹿島側は、大賀容疑者の要求で膨らんだ事業費について「おおむね見積もり通りにキヤノンに認めてもらった」と話している。これに対し、キヤノンは「見積もりは適正に精査した」として「大賀枠」の上乗せを否定。同社の御手洗冨士夫会長(73)も10日、大賀容疑者の介入を「想像もしていなかった」と述べている。
大賀容疑者はキヤノンの担当者の前でも同社の代理人のように振る舞っていたことになるが、キヤノン広報部は「会合の日時等が特定されないとコメントしようがない」としている。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090213-OYT1T01162.htm