麻生首相の軽率な郵政民営化見直し発言で、自民党が揺らいでいる。
郵政民営化を推進し既に引退表明している小泉元首相までもが、首相の一連の発言を公然と批判した。
だが、消費税問題に続いて党内抗争を再燃させてはなるまい。自民党はまず、第2次補正予算の関連法案や2009年度予算案の早期成立に全力をあげるべきだ。
騒動を引き起こしたのは、ほかならぬ首相自身である。
衆院予算委員会で、日本郵政グループの4分社化体制の経営形態見直しを検討すべきだとの考えを示した。小泉内閣当時、郵政民営化には「賛成ではなかった」とも付け加えた。
郵政民営化法に「見直し」規定がある以上、見直しに言及することは、差し支えない。
だが、前回衆院選では、郵政民営化の是非を争点に自民党が圧勝している。今になって現総裁が、反対だったと明言しては、有権者は大いに戸惑うだろう。
第一、こんな発言をするなら、入念な検証に基づく見直し案があってしかるべきだ。ところが、この答弁は、内閣官房すら寝耳に水だったようだ。首相の発言は、実体に乏しく、あまりに不用意にすぎたといえる。
その後、首相は釈明の答弁を続けたが、これも、混迷に拍車をかけた。「首相の発言に信頼がなければ、選挙が戦えない」と、小泉元首相から批判されたのも、仕方のないことだろう。
首相は、第2次補正予算に盛られている定額給付金の支給に関しても、前言を翻すような発言を重ねてきた。
今月の本社世論調査では、麻生内閣の支持率が2割を切った。定額給付金や郵政民営化をめぐる首相の軽はずみな言動が、大きく響いているとみていい。
これ以上、支持率を低下させては、政策遂行もおぼつかなくなる。首相は、資質や見識を疑わせる発言を繰り返すことのないよう、自重自戒してもらいたい。
小泉元首相は、定額給付金などの補正予算関連法案について、衆院の3分の2以上の再可決で「成立させなくてはならないとは思ってない」と異議を表明した。
だが、関連法案の衆院採決では、小泉元首相も賛成したはずではなかったか。自民党の若手議員らの造反を誘うかのような発言は、国会に混乱を招くだけだ。
景気や雇用対策の早急な実行が求められている。“郵政政局”に費やす時間はないはずだ。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090213-OYT1T01122.htm