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2009年02月14日(土) 01時30分

かんぽの宿 一括譲渡の白紙撤回は当然だ(2月14日付・読売社説)読売新聞

 疑惑が残されたまま、貴重な資産をたたき売りするのは許されない。

 日本郵政が、「かんぽの宿」などをオリックス不動産に売却する契約を撤回したのは当然のことだ。

 日本郵政の西川善文社長が13日、鳩山総務相に会い、こうした方針を伝えた。西川社長がオリックスの宮内義彦会長らと協議し、国民から強い批判を受けていることなどに配慮した結果という。

 契約は白紙になっても、入札などの疑問は消えない。総務省は日本郵政に対し、16日までに詳しい経緯を報告するよう求めている。日本郵政は洗いざらい報告し、説明責任を果たす必要がある。

 2007年の郵政民営化で誕生した日本郵政が、旧郵政公社からかんぽの宿事業を引き継いだ。年間約50億円の赤字を出すため、5年以内に売却するか廃止するかを決めることになっていた。

 日本郵政は昨年春から売却の手続きに入り、昨年末、最終的にオリックス不動産に売り渡されることが決まった。

 問題は、売却が決まるまでの入札の不透明さだ。当初、27社が名乗りを上げたが、高額で入札しようとしていた会社が、簡単な面接調査で門前払いされていた。

 その後の入札も純粋な価格競争ではなく、企画コンペのような形で行われた。最終局面では、目玉とされていたスポーツセンターが売却対象から外され、最後まで競っていたもう1社が入札から降りていた。

 こうした点について、鳩山総務相は「恣意(しい)的に譲渡先を決めるための作業にしか見えない」と批判している。確かに不自然な動きと見られても仕方あるまい。

 売却価格についても疑問視されている。対象となった土地・建物には総額2400億円の費用がかかったが、109億円で売却されることになった。

 日本郵政は、雇用維持などの条件をオリックス不動産が受け入れたことなどが大きかったとし、不当な価格ではないと説明する。

 だが、人気の高いさいたま市内の優良物件や、マンション用地として最適な社宅もあり、個別に取引すれば、より高い値で売れるはず、と指摘する声がある。

 日本郵政は、弁護士らで作る第三者委員会を社内に設置し、入札や売却価格が適正だったか検証する。総務省も独自に、同じような調査に乗り出す方針という。

 こうした調査結果を待って、新たな売却方針などを決めるのが筋であろう。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090213-OYT1T01116.htm