自民党の小泉元首相が12日、麻生首相を痛烈に批判したことは、党内で「麻生降ろし」の動きにつながる可能性がある。
特に目玉政策である、定額給付金を盛り込んだ2008年度第2次補正予算関連法案の衆院再可決に異議を唱えたことは、政権の命運にかかわる問題で、超低空飛行で航行していた麻生政権が暴風雨に突入した格好だ。
12日、党本部で開かれた「郵政民営化を堅持し推進する集い」の役員会。あいさつに立った小泉氏の表情は最後まで硬かった。
定額給付金について触れた際には「『あの時賛成したけど、実はそうではなかった』と言いたくない」と述べ、先に郵政民営化について「賛成でなかった」と言った麻生首相を痛烈に皮肉った。首相が05年の衆院解散・総選挙を行った小泉氏を「奇人変人」と述べたことにも触れ、「私は常識をわきまえている普通の人だ」と不快感をあらわにした。
会には、小泉氏や、中川秀直元幹事長、武部勤元幹事長、石原伸晃幹事長代理、塩崎恭久元官房長官に、05年衆院選で初当選した「小泉チルドレン」ら18人が出席。小泉氏は郵政民営化を「改革の本丸」と位置付けていただけに、出席者の一人は「首相の郵政民営化見直し発言は虎の尾を踏んでしまった」と受け止めた。
首相周辺は「もう引退する人の発言で、たいしたことはない。線香花火のようなものだ」と強調するが、「小泉氏のお墨付きが出た。麻生首相ではダメという動きは活発化し、倒閣運動につながる」(若手)と見る向きさえある。
小泉氏の発言により、2次補正予算関連法案の採決で造反者が出る可能性が出てきた。政府・与党は来週にも、衆院の3分の2以上の多数で再可決する方針だが、「チルドレンが軽挙妄動する恐れはある」(副幹事長)といった懸念が生じている。16人反対すれば再可決できず、その場合、麻生政権の命取りになりかねないだけに、執行部は引き締めを強める方針だ。
「集い」の出席者の多くは現時点で、造反について「2次補正予算はすでに成立しており、意味はない」(閣僚経験者)などと否定的で、武部氏は終了後、記者団に「小泉氏は(再可決すべきではないという)話はしていない」と語った。
それでも、執行部には「再可決できなかったら政権は終わりだ。そこまで覚悟して具体的に小泉氏が動くつもりなのかどうかは、見極めないといけない」(参院幹部)との不安も残っている。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090213-OYT1T00071.htm