いよいよ、指定を受けた「選任手続き期日」。裁判所には事件ごとに数十人が呼び出され、公判初日の午前中に「選任手続き」が行われる。
裁判所で最初に行われるのは事件の概要などの説明。その後、「当日用質問票」で「事件の関係者でないか」などを尋ねられる。被害者や被告人の親族、不公平な裁判をする恐れがあると認められる者などは裁判員になれないからだ。
その後は個別に別室に呼ばれ、検察官、弁護人立ち会いのもと裁判長から質問を受ける。ここで最終的に裁判員としての適性を判断されることになるのだが…。
泥酔状態だったり、いかにもヤクザ風の服装だった場合、選任には影響が出るのだろうか。最高裁広報課では「お答えする必要ありますか? 何とも言いようがありませんが」とムッとしたように困惑。しかし“裁判員逃れ”を狙い、意図的に前述のような行動をとる者が続出したら、どう対処するのだろうか。
質問票で「人を裁きたくない」という信条を書いたが辞退を認められなかった人は、ここが最後のアピールどころ。「そんなに強固な信条ならば」と理解してもらうのが肝心だという。「出来れば裁かずに生きたい」という生半可な心構えでは、辞退理由にはならないようである。
裁判官の目の前で「絶対死刑」「もう決めてます。無罪」などとエキセントリックに叫び「公平な裁判ができない」と判断され「不適格」として除外されるケースもあるが、質問手続きにおける虚偽の陳述は50万円以下の罰金に処される可能性も。「ポーズだ」と思われないよう、叫ぶ以上は相応の信念を持つことが必要だ。
一方、袖口から入れ墨が見えても、あるいは指を詰めたと思われる形跡があっても、裁判員に選任される可能性は「ありうる」(司法関係者)という。すべては裁判に誠実に臨んでくれるかどうか、が肝要とのことだ。
ただしこの人物が裁判員になり、事件の被告も暴力団組員だった場合には、被告人に肩入れしたり、逆にことさら厳しくなったりする可能性も考えられる。
実際には裁判官が質問した後、各候補者の辞退を認めるかなどが判断された上、検察側と弁護側も各4人までを、理由を示さずに不選任決定することができる。そのため支障がありそうな候補者は、フィルターがかかる仕組み…だそうだ。
最後はくじで6人の裁判員を選出(選ばれなかった人にも8000円以下の日当が支払われる)。辞退が認められたのか、何らかの理由で不選任決定されたのか、それともくじで外れたのかは「基本的に、本人には分かりません」(東京地裁広報課)。やる気もあり何の落ち度もない(と思っている)人が落選した場合、何とも嫌な感じだけが残ってしまいそうだ。
◆マスコミ関係者外れる可能性も
○…新聞や週刊誌などの事件記者が、担当する事件の裁判員になることはありうるのか? 司法関係者によると、その事件の被告人や被害者に密着取材するなど「法廷で接した証拠だけで裁判に臨むには、あまりに予断を持っている」と判断された場合には、裁判員を外れる可能性が高い。ただし、報道関係者が裁判員になった場合も、注目事件の評議の裏側を、我慢できずについ記事にしちゃうのは「守秘義務に引っかかるので許されません」(関係者)。
(2009年2月13日06時02分 スポーツ報知)
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20090213-OHT1T00083.htm