キヤノンの工場建設を巡る法人税法違反事件で、工事を受注した大手ゼネコン鹿島が、大分市のコンサルタント会社「大光」社長・大賀規久容疑者(65)の要求に従って、受注額の3%分の手数料を支払っていたことが、鹿島関係者などの話でわかった。
3%は通常の相場の2倍にあたるうえ、大賀容疑者から下請け業者を指定されたり、架空工事の発注を求められたりしたため、事業費は膨張。しかし、キヤノンはおおむね鹿島の見積もり通りに事業費を認めていたという。
大賀容疑者が鹿島などから工事受注を装って代金を受け取ったり、裏金を手渡しされたりするだけでなく表の手数料もつり上げていた形で、東京地検特捜部は、大賀容疑者が御手洗冨士夫・キヤノン会長との親密な関係を背景に高額な利益を得ていたとみている。
鹿島元幹部らによると、2005〜07年にキヤノンが大分市に新設した子会社2社の工場の造成・建設工事を計約510億円で請け負った際、大賀容疑者から口利きの見返りとして、事業費の約3%を支払うよう要求され、コンサルタント料名目で十数億円を支払ったという。ゼネコン関係者によると、民間発注工事の手数料の相場は「受注額の1〜2%分」といい、鹿島の手数料は2倍程度になる。
さらに大賀容疑者は鹿島に下請けや孫請け、「ひ孫請け」に入れる業者まで指定し、請負会社への発注額も自ら決定。中には、特捜部に大賀容疑者の共犯として逮捕された望月敏生容疑者(52)が取締役を務める造園会社「内山緑地建設」(福岡県久留米市)などへの、架空工事発注を求める場合もあったという。
キヤノンが発注する工事は、もともと大手ゼネコン「大林組」の“牙城”で、鹿島元幹部は「牙城を崩して工事を受注するため、キヤノンの代理人とみなされていた大賀容疑者の指示に従ってしまった」と話す。
その一方、元幹部らは、読売新聞の取材に「大賀さんに渡す金額を工事費に上乗せして請求しても、キヤノンは請求額をおおむね認めてくれた。大賀さんが前もって話をキヤノンに通してくれていると思った」と証言。割高な手数料を支払ったり、架空工事を発注したりしても、鹿島は利益を確保していたという。キヤノンは、これらの工事を巡り、大賀容疑者に感謝状を出すこともあった。
キヤノン広報部は「見積もりについては社内プロセスに基づいて適正に精査している」としている。
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東京地裁は12日、大賀容疑者ら12人について、20日まで10日間の拘置を認める決定をした。関係者によると、大賀容疑者は「適正に申告している」と容疑を否認している。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090213-OYT1T00001.htm