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2009年02月13日(金) 01時45分

人工衛星衝突 宇宙ごみ対策を強化せねば(2月13日付・読売社説)読売新聞

 地球の周りが「宇宙ごみ」だらけになってしまう。それが心配だ。

 米露の人工衛星が高度約800キロ・メートルで衝突した。露の衛星は1トン、米の衛星はその半分程度で、どちらも標準的な大きさだ。大量の破片が散らばったという。軌道変更で回避できなかったのか。

 世界で衛星打ち上げが始まったのは1957年だ。それ以来、数千回の打ち上げが実施された。これにより、地球の周りには、今も多数の物体が漂う。

 耐用年数を過ぎたり、壊れたりして休止した衛星、打ち上げロケットの破片、これらの衝突で生じたごみ、宇宙飛行士が落とした工具など、その数は3000万〜4000万個、重量で数千トンに達すると推計される。

 中国が一昨年、衛星破壊実験でごみを大量に出した例もある。

 このままでは人類の宇宙利用に支障が出かねない。宇宙ごみは猛烈な破壊力を持つ。

 漂うと言っても、秒速5キロ・メートル前後の速度で飛ぶ。衝突時のエネルギーは、約1センチの破片でも、自動車が高速で突っ込んだのと変わらない。まともにぶつかれば、衛星はひとたまりもない。

 過去に、宇宙ごみとの衝突により、仏の衛星が機能損傷した例がある。米では、宇宙ごみとの衝突を避けるため、ロケット打ち上げが延期されたことがある。

 今回心配なのは、日本も参加して建設が進む「国際宇宙ステーション」だ。米露の衛星が衝突した軌道より400キロ・メートルほど下にあり、直撃はないとみられる。だが破片が飛来する恐れはある。

 日本人宇宙飛行士としては初めて、若田光一さんのステーション長期滞在が近く始まる予定だ。ステーションに向かうスペースシャトルの飛行に問題はないか。

 ステーションには、小さな破片なら衝撃を吸収する防護壁がついている。大きなごみは、軌道を変えて避ける。シャトル打ち上げも、米軍が地上からレーダーで大きなごみを監視している。

 だが、ごみが増えれば万全の対策は難しい。警戒は怠れない。

 今回のような衝突・破壊で、ごみがさらに増える悪循環も懸念されている。そうなれば、あと10年で宇宙ごみとの衝突確率が爆発的に増える、とも言われる。

 大型衛星は地球に落とす、などの国際ガイドラインはあるが、それで十分か。ごみの回収はできないのか。日本は、他の宇宙開発国にも呼びかけ、対策強化に積極的な役割を果たす必要がある。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090212-OYT1T01216.htm