ただでさえ停滞している中東和平プロセスの行方が、一層困難な見通しとなった。
イスラエル総選挙で、パレスチナとの和平実現に消極的な右派勢力が大きく議席を伸ばしたからだ。
パレスチナ国家の樹立に反対する右派政党リクードは、議席を倍以上に増やした。極右政党の獲得分を加えると、右派勢力だけで過半数を制したことになる。
パレスチナ自治区ガザからロケット攻撃を受ける一方、イランの核開発疑惑に打開策も見えない。イスラエル世論が安全保障問題を重視した表れだろう。
それでも、パレスチナとの2国家共存を柱とする和平を目指す中道政党カディマは、かろうじて踏みとどまった。
党首のリブニ外相は、政権維持を図る姿勢を示しているが、新しい議会勢力図を考慮すれば、先行きは楽観できない。
カディマの獲得議席は、定数の4分の1にも満たない。連立工作を成功させるには、右派の取り込みが必須となる。そのためには、対パレスチナ政策をめぐり、大幅な妥協を余儀なくされるのは間違いない。
リクード党首のネタニヤフ元首相が主導権を握れば、一挙に右派を糾合できるのかどうか。
例えば、国内のアラブ系住民をイスラエルの脅威と位置づけ、その排斥を訴える極右政党の主張を受け入れられるだろうか。
和平問題のカギを握るのは、オバマ米政権の中東政策だ。
オバマ大統領は、中東問題を担当する特使を指名した。また、大統領としてメディアとの最初の会見は、アラブ首長国連邦の衛星テレビ局との間で行われた。
会見の中で大統領は、「領土と和平の交換」を内容とするアラブ側の和平案を高く評価した。和平実現へ向けた大統領の強い意欲を示すものと受け取られている。
イスラエルは、強固な対米関係維持のため、オバマ政権の和平への取り組みをじっくり見守る必要に迫られるだろう。その際、和平問題に背を向けたままでいられるのかどうか。
和平を阻む懸念材料はパレスチナ側にも見受けられる。ガザでの軍事衝突の結果、イスラム原理主義勢力ハマスが、住民の支持を伸ばしているばかりではない。和平交渉それ自体に対する懐疑的な声も強まっている。
こうした状況の下で、それぞれ指導者がどのような判断を下すのかが、今後、厳しく問われる。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090212-OYT1T01214.htm