長野県松本市アルプス観光協会は、上高地にトンネルを掘り、「バス高速輸送システム」(BRT)を走らせる新しい輸送システムの構想を発表した。
構想では、8・6キロのトンネルを含む約9キロの新しい道路を作り、現在、上高地へ向かう路線バスが発着している沢渡から上高地バスターミナルまで、ほぼ直線で結ぶ。その道路に、愛知万博でも紹介されたBRTを走らせる。専用の道路を走るBRTは、車両を連結して増やすこともできる。燃料電池式、ハイブリッドなどの環境に配慮した車両を使う。
上高地では、基幹道路が国道158号しかなく、渋滞、排ガスが問題となっていた。梓川の河床上昇や焼岳の火山活動による、通行止めも懸念される。このため、迂回(うかい)ルートの必要性が長年叫ばれてきた。緊急時は、新道路の一般車両の通行も可能にするので、これらの問題の解消にもつながるという。
上高地の年間観光客数は1994年に約200万人を突破した後、観光バスの乗り入れ規制などが影響し、減少。現在は、年間約150万人前後で推移している。同協会は、「BRTが新たな観光資源になり、上高地を再びPRできれば」と期待している。
上高地の新輸送システムについては、93年、旧安曇村が登山鉄道を建設する構想を発表。その後、同協会が引き継ぎ、ルートや輸送手段など研究を重ねてきた。
しかし、構想の実現には巨額の費用が必要。松本市政策課も「現時点でコメントはできない」と冷ややかだ。同協会では、総事業費250億円前後、その後の年間管理維持費は約11億円と見積もる。BRTの運賃は、現在の路線バスと同じぐらいで運行できるという。
同協会は、今後、環境省、林野庁、県、松本市など関係機関に構想を提案する。鳥居総一郎副会長は、「5年以内に完成させたい」と意気込んでいる。