記事登録
2009年02月13日(金) 00時00分

親への不満引き金 検察指摘 八王子殺傷初公判読売新聞

弁護側「知的障害あった」

 八王子市の京王八王子駅ビルで昨年7月、女性2人が殺傷された事件で、両親への不満が凶行の引き金になったと、検察側は指摘した。12日、地裁八王子支部(山崎和信裁判長)で開かれた初公判。秋葉原の無差別殺傷事件に触発されたという会社員菅野昭一被告(34)(八王子市川口町)の「俺は人を殺すまで悩んでいたと、両親にわからせたかった」との供述調書が読み上げられた。一方、弁護側は、被告が知的障害を抱え、人格形成が未熟な結果、感情を制御できず、完全な責任能力はなかった可能性などを指摘、検察側と対決姿勢を示した。

 ◆検察側

 検察側は冒頭陳述で、菅野被告がJR八王子駅北口付近から事件のあった書店まで約2時間半にわたって通行人や来店客らの様子をうかがい、「殺害する相手を探すため犯行現場を物色したうえ、抵抗できない女性に狙いを定めるなどしており、責任能力はあった」と指摘した。

 菅野被告は昨年5月、正社員として採用される約束だった板金加工会社でプレス機に指をはさみ、右手の3本の指を骨折した。供述調書によると、7月中旬に「8月末には仕事に戻れる」と両親に報告した際、父親に「あ、そう。あんなけがして、そんなに早く仕事に戻れるんだ」などと言われ、「がんばれのひと言が聞けなかった。相手にされていないと思った」と両親の態度に不満を持った。

 また、両親と同居していて、家事や雑用をさせられることに嫌気がさし、家出を繰り返していたとしている。

 ◆弁護側

 一方、弁護側は冒頭陳述で、菅野被告には知的障害があり、「簡易鑑定でも、犯行時に限定責任能力であった可能性に言及している」と述べた。次回公判で、公判前整理手続きで弁護側が申し立てている精神鑑定の採否が決まる。

 また、自首が成立すると主張した。菅野被告は犯行後、交番勤務の警察官に「自分が刺したんです」と自ら名乗り出ており、この時には、警察官が「菅野昭一」の素性を知らなかったと考えられると指摘した。

 これについて、検察側は、発生直後の午後9時55分頃には、警察が現場に残された菅野被告のリュックサックを発見し、身分証明書から犯人をすでに特定していたと主張している。

 起訴状などによると、菅野被告は昨年7月22日午後9時35分頃、同駅ビル9階の書店で、中央大4年のアルバイト店員斉木愛さん(当時22歳)の胸を包丁で刺して死亡させ、近くにいた客の女性(当時21歳)の胸を狙って包丁を突き出し、指の神経が切れるなど3か月の重傷を負わせたなどした、とされる。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyotama/news/20090213-OYT8T00031.htm