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2009年02月12日(木) 13時13分

元時津風親方、弟子への指示否定 業務上過失致死を主張東京新聞

 大相撲時津風部屋の序ノ口力士だった斉藤俊(たかし)さん=当時(17)、しこ名・時太山(ときたいざん)=が2007年6月、けいこ場で死亡した事件で、兄弟子に暴行を指示したなどとして傷害致死の罪に問われた元時津風親方の山本順一被告(58)の初公判が12日、名古屋地裁で開かれた。山本被告は「ビール瓶で殴ったのは事実だが、ぶつかりげいこは制裁目的ではなく、兄弟子に暴行を指示したことはない」と起訴内容を大筋で争う姿勢を示した。

 山本被告は「私の監督が行き届かなかったことが原因で悲しい出来事を招き、深く反省している」と述べ、遺族に謝罪した。

 弁護側は「ぶつかりげいこは正当な業務で、違法行為にはならない」と傷害致死罪は成立しないと指摘。斉藤さんの死亡は兄弟子らの勝手な暴行が原因で、親方として監督を怠ったことによる業務上過失致死罪にとどまると主張した。

 検察側は冒頭陳述で「山本被告は斉藤さんが相撲をやめようとしている態度に憤慨し、ビール瓶で腹や額を殴った」と指摘。兄弟子らに「お前らも教えてやれ」とけいこと称した暴行を指示したとし、「通常のけいこの後にぶつかりげいこをさせたことから、斉藤さんを痛めつける意図があったことは明らか」と述べた。

 弁護側も冒頭陳述を行い、検察側が「ぶつかりげいこは通常、長くても5分」とした点について、「力を出し切ることが目的で、力士が力を抜いていれば長時間になることもある」と反論。親方や弟子が棒で尻をたたいたり、平手でほおを殴ったりする気合入れは「技量向上のために必要」として、適法なけいこだったと強調した。

 山本被告の公判は、3月25日までに10回の集中審理が行われる。けいこを見ていた後援会幹部や兄弟子、法医学の専門家の証人尋問、被告人質問などが予定されている。

 <時津風部屋力士暴行死事件> 斉藤俊さんが2007年6月25−26日、愛知県犬山市の時津風部屋宿舎やけいこ場で、山本順一被告と兄弟子からビール瓶や金属バットなどで殴打を繰り返され、激しいぶつかりげいこの後、外傷性ショックで死亡したとされる事件。県警は昨年2月、山本被告と兄弟子3人を傷害致死容疑で逮捕。名古屋地裁は昨年12月に開かれた兄弟子3人の裁判で山本被告が暴行を指示したと認めた上で、懲役3年−2年6月、執行猶予5年の有罪を言い渡した。

(中日新聞)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009021290103241.html