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2009年02月12日(木) 10時27分

映画「ポチの告白」が健闘Oh! MyLife

 警察犯罪のタブーに切り込んだ社会派映画「ポチの告白」(高橋玄監督)が健闘している。「ポチの告白」は菅田俊演じる真面目な警察官が警察組織の腐敗体質に染まり、自滅していく過程を描いた作品である。警察不祥事に取り組むジャーナリストの寺澤有氏が提供した実話に基づく衝撃的な内容になっている。

 「ポチの告白」は2009年1月24日にK’s cinema(ケイズシネマ、東京都新宿区)で公開され、記者は初回の上映を鑑賞した。ぴあ株式会社の「ぴあ満足度ランキング」では同日公開の映画の中で3位になった。これは映画鑑賞後の観客に「ぴあ」の調査員が映画館の前で実施するアンケートをまとめたものである。

 記者もアンケートに応じ、そのコメントが2009年2月5日発売の雑誌ぴあ2009年2月19日号に掲載された。掲載されたコメントは以下の通りである。「警察犯罪という問題の深さを知った。国民が誰もチェックできない仕組みは改善すべきではないのか。その他いろいろなテーマが盛り込まれていて、それらを上手くつなげる監督の力量に感服した」(37頁)。

 「ぴあ」の満足度調査では最初に映画の総合的な評価を100点満点中何点であるかを回答する。その上で感想を自由に述べる。次にストーリー、映像、演出、音楽、俳優の各項目を5段階で評価する。また、項目別の感想も自由に述べられる。このように満足度調査では、映画のCMでよく使われるワンフレーズの感想とは異なり、詳細な回答が求められる。回答内容をうまくまとめたコメントが雑誌に掲載される。

 「ぴあ」の調査では興味深い点は観客の年代である。男性の50代以上と30代が多く、40代と20代以下は少なくなっている。社会性の強い映画であるため、50代以上という年配の観客が多いことは理解できる。しかし、40代を飛ばして30代が多いことは一見すると不思議である。

 30代はロストジェネレーションと呼ばれ、新卒採用時は就職氷河期で、ワーキングプアやネットカフェ難民という格差社会の矛盾を押し付けられた損な世代である。この不合理はバブル入社世代である40代と比べると、一層顕著になる。個人差はあるものの、世代的に見るならば30代の方が40代よりも社会矛盾への問題意識が強くなるのも当然の成り行きである。それが「ポチの告白」の観客傾向に反映したと考える。

 「ポチの告白」は警察犯罪という重いテーマや上映時間の長さ(3時間15分)がネックとなり上映に苦労した作品で、ようやく単館上映にこぎつけたという経緯がある。高橋監督は初日の舞台挨拶で、「映画を観られた皆さんで広めていって欲しい」と話した。記者の「ぴあ」へのコメントが、その一助になれば喜びである。

(記者:林田 力)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090212-00000001-omn-movi