教職大学院が質の高い教員を養成していくためには、教育委員会との連携を一層強めていく必要があろう。
文部科学省の大学設置・学校法人審議会が、昨年4月にスタートした教職大学院19校の運営状況などを調査した。その結果、教委との連携や入学者の確保など、教職大学院が抱える共通の課題がわかった。
教職大学院は、大学新卒者を指導力のある新人教員に、現職教員を学校運営の核になれる中堅教員に育てるのが目的だ。
調査結果によると、教委から派遣されて入学する現職教員が予想外に少なかったのが目立つ。
教職大学院は、実践的な指導力を身につける実習を重視している。このため、地域の小中高校など実習の場となる学校を確保することが義務づけられている。それには教委の協力が欠かせない。
志願者を増やすためには、教職大学院の修了者に、教員採用や処遇にあたってのメリットを示すことも必要だろう。処遇などを決めるのも、教委である。
東京都教委は、教職大学院と個々に協定を結び、その修了者については、学長推薦による採用選考を行うことを決め、初任者研修の一部免除も検討している。
また、これらの教職大学院との間で設けた協議会で、都教委が提示したカリキュラムなどの実施状況も評価している。
こうした取り組みが、教職大学院と教委の結びつきを強める。今回の調査結果では、都道府県教委によって、教職大学院との連携について温度差があるという。各教委は、地域の実情に応じた取り組みを検討してもらいたい。
ほかにも、実習を免除する基準や判定方法、大学新卒者と現職教員が一緒に受ける授業の形態などが、課題として指摘された。
実習は一定の教職経験があれば免除されるが、その基準などを明確にする必要がある。
新卒者と現職教員が同じ授業を受けることは、双方に役立つ面もある。だが、一緒に受ける方が効果的な授業と、そうでないものをよく吟味すべきだ。
都教委と教職大学院による協議会の報告では、実習の場を提供した学校に良い刺激を与えた例を挙げている。ある小学校では、若手教員が教職大学院生の学ぶ姿を見て、自分も行きたいという気持ちになった、という。
教員志望者や現職教員の進学意欲を高めてもらう努力を続けることが重要だ。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090212-OYT1T00030.htm