【ブリュッセル12日共同】世界的な自動車不況を受け、フランスのサルコジ大統領が発表した自国の自動車業界の支援策に対し、欧州連合(EU)内から「保護主義だ」(議長国チェコのトポラーネク首相)との批判が出ている。
国境の垣根を外した「EU単一市場」を監督する欧州委員会は、支援策が「EU競争法に抵触する可能性がある」と警告。ドイツのメルケル首相も「不況への懸念は共有するが、公正さも重要だ」と苦言を呈した。
サルコジ大統領の支援策は「国内の生産能力維持」を目標に、プジョー・シトロエン・グループ(PSA)やルノーなど自動車大手に低利融資などで総額78億ユーロ(約9000億円)の資金支援を行う内容。
大統領が「国内工場の存続」を支援の条件に挙げ、「支援はチェコなどで新たな工場を造れという意味ではない」と発言したことから、2004年にEU加盟後、フランスの自動車大手などを誘致したチェコ政府が猛反発。「EUの結束を危機にさらしている」と批判し、計画撤回を求めている。
ただ、今回の論争の背景には、EU内の主導権維持を狙うフランスと、チェコなど非ユーロ圏諸国の確執もありそうだ。フランスはEU議長国だった昨年後半にユーロ圏首脳会議の定例開催を提唱したが、チェコなどに阻止された経緯がある。