〈河豚〉——フグは海にいて川にはいないのに、なぜこう書くのか。中国では揚子江はじめ各地の川に生息するからだとお魚博士の末広恭雄さんが書いている◆フグは俳句で冬の季語だ。今が盛りでうまい。〈あらなんともなや昨日はすぎてふぐと汁〉は芭蕉。〈河豚汁のわれ生きている寝覚め哉(かな)〉は蕪村。〈ふぐ食わぬ奴(やつ)にはみせな富士の山〉は一茶◆俳人たちもフグ好きだったようだが、中毒とかかわりのある句が多い。〈ふぐは食いたし命は惜しし〉などとことわざにも言われた時代のことだ◆芭蕉には〈河豚汁や鯛(たい)もあるのに無分別〉の句もある。フグの毒や調理法の研究が進んだ今は、無分別などとは言われないが、処理、調理には十分な分別を望む◆山形県の料理屋と大分県のスーパーのフグで中毒事件が起きた。資格を持たない人がさばいていた。フグを取り扱う資格は自治体まかせで、まちまちだという◆どこでも東京などのように免許制かと思っていたが、こんな無分別が起きるようなまちまちは困る。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/column2/news/20090212-OYT1T00601.htm