金融機関に加えて、一般企業についても安全網が強化されることになりそうだ。
大企業の倒産を引き金に経済危機が拡大しないよう、政府が一般企業の資本増強を支援する方向で準備を進めている。
景気悪化が加速し、大手企業が相次いで赤字に転落するなど、政府による企業支援の新しい仕組みが必要な状況といえる。
だが、競争力を失った企業の安易な延命などに使われてはなるまい。支援する際の認定基準をはじめ、具体的な内容を厳密に詰める必要があろう。
新制度では、政府系の日本政策投資銀行などが企業に出資し、その一部を政府が保証する。政府の指定を受ければ、民間銀行による出資も政府保証がつけられる。倒産などで出資が焦げ付けば、損失の5〜8割を政府が負担する。
導入に向け、政府は産業活力再生特別措置法(産業再生法)の改正案を今国会に提出した。
支援対象は、産業再生法の適用を受け、3年以内に収益向上が見込めると認定された企業だ。「日本経済への影響が大きい」などの条件も加えて、基準をこれから定めるという。
金融危機で一時的に自己資本が不足したため、資金繰りに苦労している優良企業も少なくない。公的支援で増資が円滑になれば、窮地を脱する助けになろう。
バブル崩壊後の金融不況時には、金融機関への公的資金注入で、金融システム危機を回避した実績もある。
ただ、一般企業の資金繰り対策は、政策投資銀による危機対応融資や短期社債の買い取りもある。出資にまで支援を広げる必要がなぜあるのか、政府は法案審議を通じて丁寧に説明してほしい。
一般企業に対する公的支援の目的は「危機回避」である。倒産すると日本経済が揺らぐような企業に対象を絞るべきだ。
雇用者数や、市場占有率(シェア)など、経済や産業に占める重要度を示す客観的な数値基準を併用する方法もある。
「保護主義」との疑念を払うためにも、選定過程は透明にしなければならない。支援決定までの経緯や理由を開示し、監督官庁によるお手盛り救済や、地元や業界の陳情に配慮した政治の介入などは排除しなければならない。
判断を役所と金融機関任せにせず、産業再生機構の支援先を選んだ産業再生委員会のような、第三者機関も検討してはどうか。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090211-OYT1T00006.htm