視覚障害のある人などが撮影した写真を、目だけでなく「触覚」で味わう作品展が世田谷文化生活情報センター生活工房(世田谷区太子堂4)で開かれている。写真をグラフィック処理し、印刷技術で立体加工。来場者は被写体の輪郭に触れることが可能だ。都立久我山盲学校中学部の生徒4人が取り組んだ作品などを中心に紹介している。
「Touching the Images—ふれる写真展」。視覚障害者が写真を通じて人々と世界を共有していこうという試みだ。
盲学校の4人は昨年、美術の授業でカメラの使い方を学び、自分の手やコーヒーカップ、友達の姿などを写した。指導にあたった写真家の服部貴康さん(38)は「撮影したものを家族や友達に見せることでコミュニケーションを促進できる」と話す。
デジタルカメラで撮影した画像は、デザイナーがグラフィック加工で線画に起こし、立体コピー機にかける。特殊な紙を使い、専用の現像機に通して熱を加えると、黒いインクの部分が膨張して盛り上がる。生徒たちは自分で撮影したものを触って認識する作業を繰り返し、展示作品を選んだ。
生徒たちは、友達にポーズを要求したり、「笑って」と話しかけながらシャッターを切るなど、回を追うごとに積極的に。線画に触れ、友達が眼鏡をかけていることを初めて知るなど新鮮な発見もあったという。
展示会場では、学校の廊下やベランダの植木鉢、時間割表など学校生活が垣間見られる作品74点を紹介している。来場した区内在住の吉山良博さん(67)は「触れてみて、視覚障害者が自身の作品についてどう感じているのか想像してみました」。立川市在住の視覚障害者の女性(55)は付き添いの女性と来場。生徒が様々な手の動きを写した写真から作った線画に手を置き、「触って確かめられる展示はありがたい」と笑顔で話していた。
15日まで。入場無料。視覚障害者のための音声ガイドも。問い合わせは生活工房(電)5432・1543。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/news/20090211-OYT8T00118.htm