子どもがいる家庭にとって教育費は大きな支出だ。
過熱する受験ブームに加え、不況の影響もあり、最近は予定外の支出や突然の進路変更に直面するケースも少なくない。家計に見合った教育費をよく理解しておくことが大切だ。
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まず、教育費にどのぐらいかかるのかを知っておこう。女性ファイナンシャルプランナー(FP)で組織する「WAFP関東(女性FPの会)」の臼井悦子さんは、文部科学省などが公表している複数のデータを比較することを勧める。「データごとに数値が異なる。比べることで、教育費の目安がわかります」
例えば、AIU保険のデータ(2005年)では、幼稚園から大学まで、公立に通った場合と私立に通った場合の教育費を比較できる。一方、日本学生支援機構のデータ(06年度)は、短大・大学・大学院の学生が対象だが、学費に加え、必要となる生活費も調査しているのが特徴だ。
WAFP関東の牧野なな子さんは「『見えない教育費』にも注意して」と話す。中学受験の場合、小学4年から3年間の塾受講料に200万円以上かかる。さらに塾に通う交通費や弁当代、参考書代など50万円ほど必要という。
東京都内の会社員男性(39)の家庭では、小学4年の長女が昨年4月から塾通いを始め、塾代が家計を圧迫し始めた。これまで積み立ててきた学資保険(月額1万2000円)は大学入学時の満期で200万円になるが、中学受験を予定していなかったため、当面の出費が不安という。「教育計画が変わった時の対応策を考えていなかった。パートで働く妻に、収入を増やしてもらうことになりそう」と話す。
FPの仲間と「子どもにかけるお金を考える会」を作る畠中雅子さんのもとにはここ数年、こうした教育費の捻出に悩む人からの相談が増えている。畠中さんは「教育費の場合、当座の費用を漫然と支出してしまいがち。家計に見合った資金計画を」と話す。
では、家計に見合った教育費は、どの程度を想定したらよいのだろう。臼井さんは「子どもの高校卒業までに、大学4年間にかかるお金の半額程度を蓄え、高校までの授業料や塾代は月々の家計費の中から支出して、赤字にならない範囲」と話す。畠中さんも「奨学金や教育ローンを安易に借りるのは考えもの。子どもが自分で返済する場合、社会に出る時点で多額の借金を負うことになる。私立志向を改めることも必要になる」。
畠中さんによると、途中で教育資金の積立額を増額することは非常に難しい。増額できない場合の選択肢を準備しておくことも大切になる。
畠中さんが勧めるのは、児童手当の振込口座の管理を工夫すること。所得制限があるが、0歳から12歳までの子どもがいる家庭に支給され、90万円以上ためられる。キャッシュカードを作らず口座を開けば、現金を下ろしづらい。
学資保険にこれから加入する人は、収入減に備え、二つに分けて始めるのがお勧めという。「満期時300万円を目指すなら、150万円ずつ二つで始める。家計が厳しくなったら一つだけ解約する。目標額に達しなくても、教育資金はゼロにはなりません。貯蓄性の高い学資保険を選べば、中途解約しても、払い込んだ保険料と同額レベルは戻ってきます」と話している。
教育費に関する各種データ◎子どもの学習費調査(文部科学省)
(http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/001/index06a.htm)
◎学生生活調査(日本学生支援機構)
(http://www.jasso.go.jp/statistics/gakusei_chosa/data06.html)
◎現代子育て経済考(AIU保険)
(http://www.aiu.co.jp/about_us/parenting/)
◎暮らしと金融なんでもデータ(金融広報中央委員会)
(http://www.shiruporuto.jp/finance/tokei/stat/)
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/mixnews/20090211ok03.htm