「裁判員候補者名簿に名前が載りました」という通知を無視したり、あるいは「辞退の理由」を書いて調査票を返送したのに「呼び出し状」なるものが届いた場合、どうしたらいいのだろう?
殺人や強盗致死傷といった裁判員制度の対象事件の容疑者が起訴されると、調査票を返送しなかった人や、返送したけれども辞退が認められなかった人の中から事件ごとに抽選で50人〜100人が選ばれ、「呼び出し状」が送付される。
呼び出し状に同封されているのは「質問票」。これは調査票よりさらに詳しく辞退する事情などを尋ねるものだ。
最高裁発行の冊子によると、質問票では別表のような内容を尋ねることが検討されている。さらに東京地裁の広報課によれば、ほかにも裁判員になることができない「欠格事由」にあたらないかなどが尋ねられる見込みだ。
「禁固以上の罪に処せられた人」「禁固以上の刑に当たる罪につき起訴され、その被告事件の終結に至らない人」「逮捕または勾留(こうりゅう)されている人」……など。仮に今、呼び出し状が届いても、小室哲哉被告やホリエモンは裁判員になることはできない。
別表の〈3〉はかなりあいまいだ。前回も触れたが「仕事で自分の代わりがいない」という境界線は、果たしてどこで引かれるのか。たとえば毎日放送される「生番組の顔」、みのもんたやタモリ、宮根誠司といったキャスターや芸能人は?
これも当然、最高裁広報に聞けば「各裁判体の判断」となるが、どうやら「その日の番組に出ることの価値が、大変重い」と判断されるかどうかがミソらしい。毎年夏休みをとって番組を休む出演者よりは、連続出演にギネス記録がかかっている人の方が、辞退が認められる可能性は高いという具合だ。
それでは、とりたてて差し迫った事情がない一般人に“拒否権”はないのだろうか。調査票と違い質問票ではうそを書くと50万円以下の罰金が科される場合も。そこで〈10〉に注目し、信条を訴えてみる手があることはある。
裁判員裁判の対象は殺人や強盗致死傷などの重大事件で、時には死刑判決も下すケースも出てくる。宗教界では「教えにより人を裁けないがどうしたらいいか」との論争も起きているという。
司法関係者によると宗教以外にも「死刑反対論者」「先祖代々の家訓で人を裁けない」などの説明で「信条が強固で裁判員をやりたくないのではなく、できないレベル」と理解されれば、何も書かないよりは辞退が認められる可能性がありそうだという。
質問票の返送で辞退が認められた場合は「呼び出し取り消し」の連絡が来る。しかし連絡が来なければ……いよいよ裁判所に行くことになる。
◆質問票で尋ねること◆
〈1〉重い疾病又は傷害により裁判所に行くことが困難である
〈2〉同居の親族を介護・養育する必要がある
〈3〉事業上の重要な用務を自分で処理しないと著しい損害が生じるおそれがある
〈4〉親族の結婚式への出席など社会生活上の重要な用務がある
〈5〉妊娠中又は出産の日から8週間を経過していない
〈6〉同居していない親族又は親族以外の同居人を介護・養育する必要がある
〈7〉親族又は同居人が重い病気・けがの治療を受けるための入通院等に付き添う必要がある
〈8〉妻・娘が出産する場合の入退院への付き添い、出産への立ち会いの必要がある
〈9〉住所・居所が裁判所の管轄区域外の遠隔地にあり、裁判所に行くことが困難である
〈10〉その他,裁判員の職務を行うこと等により本人又は第三者に身体上,精神上又は経済上の重大な不利益が生ずる
※最高裁判所「裁判員制度ナビゲーション」より
◆スポーツ選手はシーズン中なら
○…スポーツ選手は試合などが辞退の理由になるのか。その場合、控えや代打の選手よりも、レギュラー選手の方が“有利”なのだろうか? どうやら、特にシーズン中ならば事情はくんでもらえそうだ。例えば万年ベンチのJリーガーでも「その時期にチャンスが来そうだ。今回逃したら一生先発が巡ってこないかも」との事情を説明して認められれば辞退は可能。まぁこれも最終的には「各裁判体の判断」なわけだが…。
(2009年2月11日06時02分 スポーツ報知)
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20090211-OHT1T00052.htm