農薬に汚染された輸入米を悪用するという不正が、なぜ長年、まかり通ってきたのか。
米穀加工販売会社「三笠フーズ」社長ら5人が不正競争防止法違反容疑で警察に逮捕された。
警察は、刑事責任の追及はもとより、事故米を工業用として売却していた農林水産省のずさんな行政にも踏み込んで、全容を解明してもらいたい。
容疑の対象は、殺虫剤が検出されたベトナム産うるち米だ。
三笠フーズは、関係会社などと複雑な取引を繰り返す中で「食用」「国産」と偽り、購入時の4、5倍の価格につり上げて、酒造会社に転売したとされる。
警察は実態のない取引で不正に加担した仲介業者も逮捕した。
中国産米の転売でも三笠フーズを追及し、詐欺罪の立件も図るという。組織的なあくどい利ざや稼ぎは、糾弾されて当然だ。
三笠フーズが出荷した事故米は、1400トンに上り、570トンが酒や米菓などに姿を変えた。
他の3社も、事故米を購入目的の用途以外で転売していた。
食の安全性に対する不信感を払しょくするには、他ルートの捜査も徹底すべきだろう。
事故米を購入した400業者が、商品の回収や廃棄を迫られ、多額の損失を被っている。
これを機に、業界自らが産地調査をさらに強化する必要がある。相互監視によって、蔓延(まんえん)する食品偽装の根を断ちたい。
不正を見逃した農水省の責任も重大だ。国際協定で合意し、国が輸入したコメに、何ら横流し防止策を講じていなかった。
検査も事前に通告した上でのもので、業者寄りの姿勢は明らかだった。そこに犯行を誘発する要因が潜んでいなかったか。
今回、業者の手みやげを受け取った職員らが処分された。不明朗な関係はこれにとどまるのか。
別の輸入米をめぐる事件では、入札の予定価格を漏らした農水省職員が、加重収賄罪で有罪判決を受けている。
農水省の不作為や体質にも、捜査の目を向ける必要がある。
農水省は、コメの流通経路を把握できるよう、取引記録を農家や業者に義務づける方針だ。
事故米事件を検証した有識者会議は、食の安全に関して「政府や農水の職員の意識が変わらない限り、いかなる制度や仕組みを作っても作動しない」と断じた。
食に携わるすべての職員が、肝に銘じねばならない。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090210-OYT1T01166.htm