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2009年02月11日(水) 22時59分

ねじれ現象、連立交渉の難航必至 イスラエル総選挙産経新聞

 【エルサレム=黒沢潤】イスラエル総選挙(定数120)は10日夜に即日開票され、11日未明の選管推定(開票率99%)によると、最大与党の中道カディマが28議席(解散前29議席)を獲得、最大野党の右派リクードの27議席(同12)をわずか1議席上回り、第一党の座を保持した。しかし全体では、リクードを中心とする右派勢力が過半数を占める“ねじれ現象”が起きており、連立交渉の難航は必至。また、パレスチナの和平交渉に懐疑的な右派勢力が伸長したことで、和平プロセスが停滞する可能性も高まっている。

■カディマの善戦

 野党のうち、極右政党の「わが家イスラエル」が11議席から15議席に躍進する一方、左派与党の労働党は18議席から13議席に減らし、結党以来初めてとなる第4勢力に落ち込んだ。正式結果は12日夜以降に判明する。投票率は65・2%で、前回2006年の総選挙より2ポイント上がった。

 劣勢が伝えられていたカディマが議席減少を最小限に抑え込めたのはなぜか。

 選挙前に踏み切ったパレスチナ自治区ガザ地区への大規模攻撃がある程度成功したほか、有権者の間で、イスラエル右派勢力と米国との対決を避けたいとの配慮が働いたことなどが要因として指摘されている。

 ただ、リクードと「わが家イスラエル」の間で右派票の“奪い合い”が起きたことも見逃せない。いずれにせよ、和平交渉継続を公約としていたカディマの方針が今回の選挙で追認されたとは言い難い。

■連立交渉の行方

 「有権者は今回カディマを選んだ。われわれが次期政権を作る」(カディマのリブニ党首)

 「わが党率いる右派陣営の明らかな勝利。私たちが政権を作る」(リクードのネタニヤフ党首)

 今回の選挙は与野党の党首が勝利宣言をする事態となっているが、それぞれ過半数を制するには61議席が必要だ。カギとなるのは第三党の「わが家イスラエル」。リーバーマン党首は「右派政権(樹立)に傾いている」と述べており、リクードは同党を含む計65議席の右派勢力で政権を樹立したい考えだ。

 しかし、世俗主義の「わが家」とユダヤ教超正統派シャスとの間では対立があり、右派陣営がすんなりまとまらない可能性もある。

 一方、カディマはリクードに大連立を呼び掛けている。ただ、リクード取り込みに成功しても、和平推進は困難とみられる。「カディマはリクードという『手錠』をはめられたも同然で、1ミリ動くにもリクードからブレーキが掛かる」(イスラエルの「アブラハム財団」のモハンマド・ダラウシェ所長)わけだ。

 ペレス大統領は今後、当選議員の1人に組閣を指示する。通常は第一党の党首がその任を担うが、ペレス大統領が誰に指示するのかに注目が集まっている。

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