2009年02月11日(水) 22時57分
関西一の女相場師逮捕 何もかも周到に準備?(産経新聞)
「関西一の女相場師」と呼ばれ、近畿を中心に中・四国地方の約200人から総額15億円以上を集めた大阪府泉佐野市の主婦、岩田矩子容疑者(54)は、いったんは出資者の前から姿を消しながら、みずから泉佐野署に連絡を入れ、自宅や事務所の家宅捜索にも立ち会った。逃走中、出資者らに謝罪の手紙を送り、覚悟を決めたうえでの出頭にも見えるが、事務所からは株取引に使っていたパソコンや関係書類はなくなっており、事前に逃亡を準備した周到さも浮かび上がる。
■失跡の計画性
「めぼしい証拠品はほとんどなかった」
今月6日の捜索後、捜査関係者はこう漏らした。あるはずのパソコンや帳簿、通帳などがすべて持ち出されていたからだ。
捜査員が岩田容疑者を追及すると、「パソコンの一部は売って現金にした。残りのパソコンと帳簿は夫が持っている」と答えたという。自身は現金約三十数万円をもつのみだった。
岩田容疑者が突然行方をくらませたのは1月26日。不審に思った出資者ら約20人が翌27日に自宅に押しかけると家族4人のほか、飼い犬もいなくなっていた。
もちろん、岩田容疑者は一文無しになって家を出たわけではない。姿を消す約1週間前まで「オバマが就任すれば必ず相場が動く」と大口の出資金を募り、昨年11月からの3カ月間だけで2億〜3億円を集めたといわれている。
岩田容疑者や家族が自宅に戻った形跡がないことから、パソコンや帳簿類などの“証拠隠滅”は、金策に走りながら着々と進めていたとみられている。
■巧みな勧誘術
岩田容疑者は10年以上前から知人らの出資金をもとに運用を開始。平成19年5月には出資金の管理組織として「アクア有限責任事業組合」を設立し、資金の運用を証券会社に委託しながら、3カ月に1回、2〜5%の配当金を支払っていた。
同年秋ごろに知人の紹介で岩田容疑者と知り合った大阪府内の自営業の男性(50)は「彼女の話を聞くとだれでもだまされると思う」と振り返る。
家族や知人が高額の利益をあげた成功談に始まり、現在の株価の動きや為替相場の変動などを詳しく説明されると「投資話にも説得力があった」という。
そのうえ、岩田容疑者は初対面の人には出資を無理強いすることはなかった。「私に任せれば絶対に大丈夫」と言い切りながらも、「余ったお金があれば、こちらに預けてもらってもいいと思いますよ」と、やんわりと話を締めくくる。
男性は約1カ月後に100万円を投資。その後も段階的に増資し、総額400万円を出資した。
■出資者の扱いに差
男性の配当金は今年1月まで滞ることはなかったが、出資者によっては昨年10月ごろから配当金が支払われなくなっていた。配当の割合も個人によって異なった。
事業組合の内規では「3カ月ごとの運用実績により変動があります」とされたが、実際には岩田容疑者の一存で5%や10%に“変動”したという。
また、解約が相次いだ昨年秋ごろから、岩田容疑者は元本を返還できなくなり、大口の出資を募るようになったが、被害者の中には「億単位の出資をしている東京の法人に優先的に返済された」とみる人もいる。
そうした資金運用の実態を裏付ける帳簿や通帳などの証拠品は岩田容疑者の夫によって持ち出されており、泉佐野署は夫の行方を捜し出し、事情を聴くことにしている。
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