2009年02月11日(水) 21時12分
<イスラエル総選挙>中道カディマ第1党に 右派勢が過半数(毎日新聞)
【エルサレム前田英司】イスラエル総選挙は11日に開票が進み、開票率99%時点で、パレスチナ独立国家との「2国家共存」を追求する最大与党の中道カディマが、和平進展に消極的な右派政党リクードを土壇場でかわし、1議席差で第1党に立った。ただ、国会(定数120)全体では右派勢力が過半数を占め、カディマ、リクード双方が「勝利宣言」をして新政権の樹立を目指す波乱の選挙となった。
国会を明確に先導する政党が不在の結果、新政権は不安定になる恐れがあり、重大な政治決断を迫られる中東和平交渉の進展は、極めて難しい情勢だ。
選管発表によると、カディマが28議席(改選前29議席)を確保。これにリクードが27議席(同12議席)で迫った。より過激なパレスチナ人分離政策を掲げる極右政党わが家イスラエルが15議席(同11議席)に躍進した一方で、中道左派・労働党は13議席(同19議席)と、第4党に転落した。
開票の最終集計結果は12日午後に判明の見通し。投票率は65.2%で、過去最低だった前回06年時の63.2%をわずかに上回った。
カディマ党首のリブニ外相は11日未明、「もはや右派、左派が衝突している時代でない。世論は中道を求めた」と勝利を宣言。「我々の価値観の下で国を引っ張っていかなければならない」と、リクードを含む他党に「挙国一致内閣」の樹立をも呼びかけ、首相就任に意欲を示した。
一方、リクード党首のネタニヤフ元首相は「選挙結果を見れば愛国主義勢力(右派勢力)の勝利は明白だ。リクードは劇的に支持を伸ばし、議席数も2倍以上に増えた」と述べ、新政権作りを主導することに自信を見せた。
ペレス大統領は選挙結果を受けて各党から意見を聞き、来週中にも適任者を判断して組閣を要請する。第1党の党首が慣例だが、右派優勢の状況でリブニ外相では組閣が難航すると判断すれば、ネタニヤフ氏に要請することもある。
今回の選挙はオルメルト首相の汚職疑惑での引責辞任表明を受け、10年予定が前倒しで行われた。直近まで続いたパレスチナ自治区ガザ地区攻撃などの影響で、世論の関心は安全保障に傾き、事前の世論調査ではリクードが優勢だったが、最終盤でカディマが巻き返した形だ。
▽中島勇・中東調査会主席研究員の話
第1党カディマ、第2党リクードが勝利宣言した。中東和平や安全保障問題について、民意は明確な判断に達せず、様子見という状況だ。
建国から60年がたち、イスラエルで生まれ育った世代が有権者の中核になり、左派労働党の支持は減少している。06年の第2次レバノン戦争での苦戦やイランの脅威で、安全保障に強い右派に政権を任せたいという流れがあり、前回06年選挙に比べリクードの議席が倍増した。一方、短期的にはガザ侵攻が評価され、カディマは事前予想ほどに減らなかった。
カディマ政権なら中東和平を前進させ、リクードならブレーキをかけることになりそうだ。だが、いずれにせよ連立政権が組まれ、第3〜5党が鍵を握ることになる。どの組み合わせも動きにくいだろう。
ペレス大統領は、第1党にまずは政権を任せるだろうが、新政権は安定せず、民意をはっきりさせるため総選挙もありうる。【聞き手・花岡洋二】
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