オリックス不動産(東京)への一括売却が白紙見通しとなった日本郵政の「かんぽの宿」七十カ所の二〇〇七年度個別収支が十日、明らかになった。うち五十八カ所(三カ所は休館)が経常赤字で、赤字幅は百万—二億五千万円。一方、十一カ所の黒字や収支均衡(一カ所)の各施設に対しては、地元などから個別に売却を求める声も一部で上がっている。
赤字が一番大きかったのは、さいたま市の「ラフレさいたま」(経常赤字二億五千八百万円)。次いで北海道小樽市と那覇市の施設がともに一億二千四百万円の赤字だった。休館を除く赤字額一千万円以下の施設は十二カ所あり、赤字が比較的小さいことから運営の効率化次第では黒字化が見込める施設もあるとみられる。
鳩山邦夫総務相は、かんぽの宿の売却をめぐり「赤字が出ない料金設定とか、黒字化の努力をしていくべきだ」と強調。利用料金を値上げしてでも経営を立て直し、高値で売却するよう求めている。
一方、黒字施設は神戸市の「かんぽの宿 有馬」(経常利益一億二千六百万円)や兵庫県赤穂市の宿(同六千万円)、滋賀県彦根市の宿(同五千二百万円)など計十一カ所。静岡県熱海市の宿は収支トントンだった。「有馬」については、有馬温泉観光協会が鳩山総務相に地元で引き受ける姿勢を示している。
また〇七年度の七十カ所の経常損益額の累計が約十六億円の赤字だったことも分かった。日本郵政は宿泊事業全体の赤字額が年間四十億—五十億円規模と説明しており、残りは、かんぽの宿の本社事業部やサポートセンターなど管理・支援部門の赤字が約二十四億円に上る。