【ワシントン10日共同=有田司】米上院は十日、本会議を開き、総額八千三百八十億ドル(約七十六兆円)の大型景気対策法案を可決した。オバマ大統領が最優先課題に据えてきた法案は、下院に続き難関の上院を通過し、経済危機克服に向け一歩進んだ。
上下両院で法案の内容が異なるため、両院協議会で今後、法案を一本化する作業を急ぐ。大統領は遊説先のフロリダ州で「いいスタートだ」と可決を歓迎、十六日までの成立を図るため、数日内に一本化作業を終えるよう議会指導部に促したが、両院の調整が難航して遅れる可能性もある。
定数一〇〇の上院の採決は賛成六一、反対三七。民主党議員に加え、法案の修正作業に加わった共和党穏健派の三議員が賛成票を投じ、迅速な可決に必要な六〇票を辛うじて確保した。
しかし共和党の大半の議員は財政支出の規模が大きすぎ、即効性も薄いなどとして反対。大統領が掲げていた「超党派」の合意形成はならず、課題を残した。
上院の法案は、住宅購入者への優遇税制を年最大一万五千ドルに引き上げるなど減税規模を拡大。一方で各州への補助金を四百億ドル減額、二百億ドルの学校改修費などを削除した。共和党の主張を取り入れたためで、減税や歳出の内容が総額八千百九十億ドルの下院の法案と一部異なる。
公共事業で米国製鉄鋼などの使用を義務付ける「バイ・アメリカン条項」も、日本を含む世界各国・地域から保護主義との批判が強まったため、上院では「国際間の合意に沿った形で適用する」と修正した。
これらの違いを調整して法案を一本化した上で、上下両院で再議決する必要がある。