2009年02月11日(水) 20時00分
米国債大量保有“一蓮托生”のリスクはらむ(産経新聞)
米政府が新たな金融安定化策を発表し、議会上院も景気対策を可決したが、今後、米国の財政支出と米国債の発行が雪だるま的に増大するのは避けられない。同盟国で中国に次ぐ米国債保有国である日本に対し、購入圧力が高まるのは必至だ。16日にはヒラリー・クリントン米国務長官が来日するが、市場では「米国債のセールスに来る」との声が上がる。財政悪化で米国債が暴落したり、円高ドル安が進んだりすれば、日本は巨額の損失を被る。米国債の大量保有は、“一蓮托生”の関係が強まるリスクをはらんでいる。
市場関係者は10日から13日に実施される過去最大規模の670億ドルに上る米国債の発行入札をかたずをのんで見守っている。「順調に消化されないと、市場で国債が売られ、長期金利が上昇しかねない」(大手邦銀)からだ。
10日は株安による資金逃避で国債が買われ、価格に反比例する利回りは、指標となる10年債で2・8%台に急低下したが、前日の9日には昨年11月以来となる3%台に上昇していた。
「不況下の金利上昇」は最悪のシナリオだ。本来、不況時には低金利が続くとの予想から国債が買われ、長期金利は低下する。
しかし財政悪化懸念で国債が売られ、長期金利が上昇すれば、企業や家計の利払い負担が増大し景気はさらに冷え込む。新発債の利率も上昇し、利払いで財政悪化に拍車がかかる。
米国債の今年度の新規発行は3兆ドルに上り、財政赤字は過去最悪の1兆ドルに達する見通し。長期金利は「さらに2・5%上昇する可能性がある」(大和総研の熊谷亮丸シニアエコノミスト)という。
「米国の新たな救助者・日本」。国際金融ストラテジストのディビッド・スミック氏は8日のワシントン・ポストへの寄稿で、日本が米国債を積極的に購入する一方、米国が円高是正のための円売り・ドル買いの為替介入を容認する「バーター取引」を提言した。
日本の米国債保有額は昨年9月に中国に逆転され、2位となった。日本は介入に伴い買ったドルで米国債を購入してきたが、平成16年3月以降は介入を封印し保有額は微減傾向にある。
円高は日本の輸出企業を痛めつけており、介入再開はまさに渡りに船だ。米国の輸出企業には不利になるが、ドル安防衛の効果がある。スミック氏は「お互いメリットのある取引が成り立つ」と指摘する。
「米国債購入の話が出るとすれば、今週末のG7の日米財務相会談。ヒラリー国務長官が来日時にうっかり話してしまう心配もある」。財務省関係者は米国の期待をひしひしと感じている。市場には「日銀が買い取り対象にする」との観測もある。
だが米国債保有はリスクを伴う。米国への信認が低下し、国債が売られ、ドル安が進めば、評価損と為替差損のダブルパンチで、日本の“富”が失われる。
クリントン国務長官が日本に続いて訪れる中国は、すでに米国債購入に慎重な姿勢を見せ始めている。輸出頼みの日本経済の回復には、米国の再生が不可欠。米国債の積極購入でその手助けをするのか。難しい判断を迫られそうだ。
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