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2009年02月11日(水) 19時56分

米金融安定化策、具体性乏しく市場に失望感産経新聞

 【ワシントン=渡辺浩生】米政府が10日発表した最大2兆ドル規模に上る包括的な金融安定化策は、「具体性に乏しい」との失望を買い、米国株は今年最大の下げを記録した。銀行の不良資産を公的資金で買い取る「バッドバンク」構想は官民共同の基金に後退したうえ、中身は何も詰まっていない。見切り発車の背景には、10日までに議会上下院で可決された大型景気対策の成立を急ぎ、財政支出がさらに膨らむ公的資金の思い切った投入に踏み込めなかったという米政府のジレンマがある。

 「日本の失われた10年の失敗」。オバマ大統領は10日のメディアとのインタビューで、対応が後手に回った日本を教訓としたことを強調してみせた。

 だが、官民共同基金は買い取りの仕組みや価格の算定、政府の拠出額や損失保証など詳細について、「今後数週間、数カ月かけて検討する」(財務省幹部)というのが実情だ。

 また、米連邦準備制度理事会(FRB)がローン担保証券の購入を通じて資金を供給する制度を最大1兆ドルに拡大する措置も、すでになりふりを構わない金融資産の購入で、信認の低下が危険視されている中央銀行に頼り、さらに負担をかけるものだ。

 ブッシュ政権で昨秋成立した金融安定化法では、7000億ドルの公的資金枠のうち3500億ドルが金融機関を中心にした資本注入に使われたが、「条件が甘く、貸し出し増に結びついていない」との批判が上っていた。

 残る3500億ドル分の公的資金枠の運用にあたり、ガイトナー長官は「高水準の透明性と説明責任を課す」と強調、主要金融機関の自己資本の状況を調べる「ストレステスト(負荷試験)」の導入で経営監督の強化も図る。

 しかし、10日の上院公聴会では「詳細に欠くコンセプト案であり、効果を評価することができない」(共和党のシェルビー議員)との批判が噴出した。

 さらに一連の対策で残りの公的資金を使い果たすのは必至だが、同長官は資金枠の追加について明言を避けた。

 元FRB金融政策局長でエコノミストのビンセント・ラインハート氏は、オバマ大統領が8000億ドル超の景気対策の成立を最優先にしており、「予算への影響を極力少なく見せたかった」と分析する。

 共和党を中心に過去最悪の財政悪化への批判が高まるなか、問題解決に必要な十分な公的資金投入に躊躇(ちゅうちょ)した側面は否定できない。

 しかし、経済危機の核心は金融機関の不良資産問題にあり、対応が後手に回れば、それこそ日本の失敗を繰り返すことになる。厳しいデビューとなったガイトナー長官が、市場の信認を得られる安定化策の再提示を迫られるのは必至だ。

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