国を担う人材の育成には、教育への十分な投資が欠かせない。特に、各先進国が力を入れている高等教育分野は、資源の乏しい日本が国際競争を勝ち抜くために重要である。
政府の教育再生懇談会が第3次報告で強調したのもこの点だ。
「大学全入時代」の教育のあり方について、高等教育への公的支援に納税者の理解を得るためには、「教育の質の担保に努力しない大学は淘汰(とうた)もやむを得ない」としている。その上で、評価できる大学への支援拡充を求めた。
高等教育の質が低下すれば、大学卒業者らに与えられる学位が海外で通用しなくなったり、優秀な留学生を呼び込めなくなったりして、日本の高等教育全体の評価を下げかねない。
各大学の優れた事業などについて、競争原理を導入した公的資金の配分が徐々に始まっている。これらを、さらに充実させていく必要があろう。
経済協力開発機構(OECD)が昨年発表した国内総生産(GDP)に対する公的教育支出の割合(2005年)をみると、日本は04年より0・1ポイント下がり、過去最低の3・4%になった。比較可能な28か国で最下位だった。
最近公表された民間の国際大学ランキングでは、日本は他の先進国に比べて低迷している。
企業や卒業生からの寄付が潤沢な米国の大学などと、単純な比較はできない。だが、教育学者からは「寄付に対する文化の違い」だけでなく、米国の大学では基金運用に多数の専門職員を配置し、努力しているとの指摘もある。
日本の大学でも、自助努力の一環として検討に値するだろう。
昨年策定された国の教育振興基本計画では、教育への投資充実を求めている。
基本計画は決定直前になって、文部科学省が急遽(きゅうきょ)、今後10年間に投入する教育投資の目標額を盛り込もうとした。しかし、十分な準備もなく粗雑な算定だったため、目標額を明記できなかった。
基本計画を受け、中央教育審議会も中長期的な大学教育のあり方を審議している。教育専門家らだけではなく、経済学者なども交えて議論すべきではないか。
どの分野でどういう成果を上げるために、どれだけの公的な資金をつぎ込むのか。
教育の分野では、数値目標を掲げるのが難しい面もある。だが、可能な限り数字で指標を示し、メリハリを付けた現実的な施策を打ち出してもらいたい。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090210-OYT1T00036.htm