2009年02月10日(火) 12時44分
<転居トラブル>敷金は返ってくる! たばこのヤニ、床のくぼみ…解決の秘けつは(毎日新聞)
進学や就職を機に転居が増えるこの季節。国民生活センターによると、06年度の賃貸アパート・マンションに関する相談は3万1880件で、そのうち「保証金・敷金など」に関するものが1万2786件ともっとも多い。トラブルに巻き込まれないためにはどうしたらいいのか。筆者自身の転居を例に、NPO法人日本住宅性能検査協会副理事・吉野雅明さんに話を聞いた。
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敷金とはそもそも何なのか。簡単に言えば「家賃の滞納や室内の破損など貸主に迷惑を掛けたときに、入居者が支払えない、支払わない場合差引くことができる預け金」だ(日本住宅性能検査協会ホームページより)。従って、借り主に落ち度がなければ敷金は返金されなければならない。しかしトラブルの原因としてしばしば登場するのが「原状回復」だ。原状回復とは、普通に使っていれば生じない破損など、借り主の責任で壊れたり、傷つけたりした個所を復旧すること。年数の経過や通常の使用で自然に状態が悪化するものまで責任は問われない。この「通常の使用」をめぐって、家主と借り主は対立しがちだ。
筆者の場合、まず気になるのが喫煙による壁紙の黄ばみだ。「たばこの黄ばみは、程度にもよるが基本的には借り主の責任」と吉野さん。ヘビースモーカーの筆者。クリーニングだけでは済まず、張り替えが必要だ。しかし全額負担の必要はない。国土交通省住宅局がまとめた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によれば「壁紙は張り替えたときから毎年、15%ずつ減価償却していくのが目安。入居して4年だと、すでに60%減価償却しているという考えになります」と吉野さん。
次に、床に家具を置いてできたくぼみや日焼けが気になるが、これらは通常の使用の範囲内。借り主の責任ではない。「借り主には注意して部屋を扱う『善管注意義務』がありますが、この義務の範囲外は負担する必要がない」と吉野さん。「減価償却分や自然損耗分は家賃に含まれていると考えるのが一般的」だという。ちなみに筆者の場合、転居直前に空き巣に入られ、その際、施錠していたベランダのサッシをバールのようなものでこじあけられ、サッシの枠がかなりの程度曲がってしまったが「鍵をかけて家を出ている以上、この被害は借り主のせいではない。貸主さんも気の毒ですが、しかしだからといって借り主に負担させるのは間違い。加害者はあくまで空き巣です」とのこと。
また「原状回復」でよく持ち上がる問題として「ハウスクリーニング」の代金がある。業者の手で部屋を清掃して入居当初に戻すものだが、次の入居者に部屋を貸して家賃収入を得るのは貸主であり、そのための代金を借り主が負担するのは納得がいかない。これについては「一般的な掃除」がされていれば問題ないというのが、同ガイドラインをもとにした吉野さんの見解だ。最近、多くの賃貸借契約書に「特約条項」として「畳表替・ふすま交換・室内クリーニング費用は理由にかかわらず入居者の負担とする」などと書かれているのが目につくという。このような特約条項はほとんどの場合、貸主側に有利だ。賃貸借の「プロ」である貸主や管理会社に比べて「弱い立場」にある一般消費者に、一方的に認めさせたものについては「無効」という判例が多く出されていて、契約書に判をおしたからといって、あきらめる必要はないそうだ。
トラブルを防ぐために必要なこととして、吉野さんは二つのポイントを上げる。一つは「特約に注意すること」。もう一つは入退居時、借り主・貸主が立ち会い、チェックリスト(確認書)を作るということ。「傷などがある部分は、日付入りの写真を撮っておくといい」そうだ。なお筆者の場合、吉野さんのアドバイスの結果、敷金の約半分が戻ってきた。「一般の方はほとんど賃貸借の知識がありません。困ったときは泣き寝入りせず、われわれ専門家に相談してください」と吉野さん。転居を控えた方々に、ぜひ参考にしてほしい。【長岡平助】
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