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2009年02月10日(火) 20時45分

骨董品、絵画、宝石の「ネット公売」 素人が手を出すのは危険?J-CASTニュース

 国税局や地方自治体が税金滞納者から差し押さえた骨董品、絵画、宝石などを競売にかける「官公庁オークション」の人気が高まっている。12.32カラットの大きなエメラルドの指輪は44万円、「ロレックス」の腕時計は15万円、フランス有名工房で1900年頃に作られたビスクドールは46万円。素人目にはお買い得に見えるが、「真贋」などを記した「鑑定書」がないものもあり、専門家からは「現物を見ないネット取引は大変危険だ」という指摘もある。

■12.32カラットの大きな天然エメラルドの指輪は「44万円」

 国税庁が税金滞納者から差し押さえた物件を競売にかける「官公庁オークション(インターネット公売)」。「Yahoo!オークション」内で年4回行っており、2008年度最終回の入札を09年2月17日から受け付ける。出品されるのは、全国の国税局で押収した骨董品、絵画、宝石、車、土地などで、バラエティ豊かだ。

 12.32カラットの大きな天然エメラルドの指輪は「44万円」。購入した店の鑑定書が付いている。見積価格は「よく知っている人の意見を参考に決定」したという。「中古品ですので、多少なりのキズがあります」「収納箱が付属していますが、箱の上蓋が破損しています」「サイズ等は関東信越国税局職員の計測によるものです」などの注意事項が記されている。

 スイスの高級腕時計「ロレックス」は文字盤の直径35mmのタイプで「15万円」。「中古品につき、使用に伴う細かいキズや汚れがあります」「保証書はありません」「動作確認は行っておりません」という使用状況が明記されている。時計を保管している広島国税局が日本ロレックスに鑑定を依頼し、本物であることは証明されている。

 1900年頃に作られたという高さ77cmのビスクドール(陶器製の人形)は46万円。ビスクドールで有名なフランス「Jumeau(ジュモー)工房」で作られたものだ。洋服や靴は交換されている可能性があるが、人形の体に工房名が刻印されている。

 日本で最も古い絨毯と言われている「鍋島緞通」の95cm×191cmの未使用敷物は76万円、薔薇の絵を多く描いたことで有名な山本彪一の作と思われる絵画は67万円、高さ約29.5cmの金箔が貼られた象牙飾壷は84万円。高額商品がずらりと並び、掘り出し物への期待も高まる。ただ、商品説明欄に「真贋鑑定はしておりません」というものが多く、本物かどうかは不明だ。

 国税庁徴収課の担当者によると、傷がある、破損している、と状態を明記しており、納得した上で入札してもらっているので、過去にトラブルになった例はない。高額商品も多いので、事前に下見会を行うこともあるという。

 鑑定をしていない理由について、こう明かす。

  「各地方国税局に対し、できるだけ真贋鑑定をしましょう、と呼びかけていますが、なかなかできていない状況です。不動産のように鑑定士がいるものもあれば、絵画のように評価専門機関が確立していないものもあります。有名作家の作品ならば収集している美術館や作家本人に聞くこともあるが、そうでなければ古美術商やコレクターなど専門知識を持つ人に聞いて見積もり価格を決めている。もっとも、この場合は真贋鑑定にはなりませんが…」

■「鑑定を依頼するにも、どこに聞いたらいいかわからない」

 国税庁が定める統一ルールはないようだが、地方国税局の担当者の中には、「高そうな物件になるほど値段をつけるのが難しい。鑑定を依頼するにも、どこに聞いたらいいかわからない」という声も上がっている。

 地方自治体でもインターネット公売を年8回実施し、09年1月現在で574の自治体が参加している。04年7月から一早く取り入れている東京都。08年末までに803件を売却し、約2億8800万円の収入を得た。車が多く、09年2月上旬に実施したネット公売でドイツ高級車「ベンツ」が600万円で落札された。次回は2月13日から行う。

 都主税局徴収部機動整理課の課長は、

  「初回から真贋鑑定を行っています。偽物だと判定されれば出しませんので、出品しているものはすべて本物です」

とアピール。

 宝石の場合、宝石店3店舗に鑑定を依頼する。ブランド品も同様だ。しかし落札の際に鑑定書は付かないという。

  「鑑定書を作ってもらうのに数万円かかります。80万円とか90万円の高額査定がつけば、鑑定書よりも安い鑑別書(宝石の種類と天然かどうかという証明書)を取るようにしています」

 ヤフージャパン広報担当者は、

  「真贋鑑定の有無は自治体に判断してもらっています。強いて言うならば、商品説明に関しては誤解がないよう、わかりやすい表記をお願いしています」

と話している。

 未鑑定であることを承知した上で入札したとしても、万が一、落札後に偽物だと判明すれば、「官公庁が偽物を売った」ことになり問題になることはないのか。

 神奈川県質屋組合連合会の担当者は、こうみている。

  「エメラルドは大きさだけで価値が決まるのではなく、色や透明性、石に含まれている成分(内包物)なども値段を左右します。業界では現物を見もしないネット取引はあり得ません。ましてや知識のない素人の場合は危険で、お年寄りが偽物とは知らずに買ってしまうこともあるでしょう。官公庁が売った商品が後で偽物だとわかったら、社会的にも問題になると思います」


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