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2009年02月10日(火) 06時02分

[知ってるつもり!?裁判員制度](1)みのもんたでも辞退できない!?スポーツ報知

 裁判員制度が開始される5月21日まで、あと100日となった。殺人などの重大事件の審理に一般市民が参加することになるが、最高裁の意識調査によると、参加に前向きと答えているのはわずか16%ほど。趣旨や仕組みの周知が徹底されたとは、到底いえない状況だ。様々な不安や疑問の中、施行されるこの制度の正体は? 関係各所に根掘り葉掘り聞いてみた。第1回は「もし裁判員候補者名簿に名前が載ってしまったら…」。

 昨年11月28日、最高裁から全国の約29万5000人に対し、「2009年」の裁判員候補者名簿に名前が載ったことを通知する文書が送付された。衆院議員選挙人名簿に名前がある20歳以上の有権者のうち、352人に1人が選ばれた計算となる。

 通知に同封されているのは「調査票」。辞退を希望する者は、これに事情を書いて返送する。裁判員になるかどうかを分ける第一関門だ。

 候補者名簿は無作為に作成。そのため通知は麻生首相にも芸能人にも暴力団組員にも、刑事事件の容疑者にも届く可能性がある。事実、検察庁幹部に届いたとも報じられた。調査票でまず尋ねられるのは、裁判員になれない職業に就いていないかだ。

 裁判員になれない職業として規定されているのは、国会議員や刑事、裁判官、大学の法学部教授など。「芸能人や有名スポーツ選手も、職業だけを理由に辞退することはできません」(詳しい司法関係者)。みのもんたばりの多忙でも、それだけでは辞退できず、暴力団組員ですらも裁判員になることを禁じられてはいない。

 次の調査項目は、1年を通じて辞退できる場合について。70歳以上や学生に加え「重い病気やけががある人」も辞退できる。しかし、どの程度なら「重い病気」と言うのか? さらに「ひきこもりだ」「人前に出られない」などの事情を抱える人もいるはずだが…。

 最高裁広報課によると「それらを辞退理由として認めるかは各裁判体の判断。法律で細かく定まっているわけではないので、答えようもない」とのこと。このあたりの混乱は必至だ。

 3つ目は、裁判員になることが難しい特定の月があるか。介護や出産、仕事などで特に忙しい時期を2か月まで指定、具体的な事情を記入することができる。納期や農作物の収穫など、繁忙期を理由に辞退を申し出る場合、ポイントは「自分が処理しなければ、非常に大きな損害が生じる恐れ」があるか。「その仕事、誰か代わりにやれないの」という話だ。

 ただ、現実には自分が「私がいなくちゃダメなのよ」と思っても、周りから見たらそうでもない場合や、その逆もあるわけで、日ごろ一緒に働いてもいない裁判所の方々が、どこまで正確に判断できるかはナゾだ。

 祭りや伝統行事など、裁判官から見たら単なるレジャーでも、その人にとっては絶対参加したい大切なものかもしれない。熱い思いをどこまでくんでくれるのか?

 この点に関しても最高裁広報では「各裁判体の判断」という説明を繰り返すわけだが、詳しい司法関係者は「きちんと説明を書き、なるほどと納得させられれば辞退は認められるはず」。つまり文章が得意な人は得ってことになるのか。ちなみに調査票には、ウソを書いても罰則はなし。今回最高裁に返送された調査票は全体の約4割にのぼった。

 ◆受け取り拒否通用しません ○…どうしても辞退したい人が、封を開けずに「受け取り拒否」し、調査票を返送したら、候補者名簿から自動的に名前が消えたりはしないだろうか? 日本郵政グループの広報によると「私どもは配送の業務を行っているだけなので、郵便物の内容には関知しません」。また、詳しい司法関係者も「受け取り拒否や放置をしても、候補者名簿に名前が載ったままになるだけなので、意味ありません」。通知を無視するくらいなら、辞退したい事情を書き込んで返送するべし、とのことだ。

(2009年2月10日06時02分  スポーツ報知)

http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20090210-OHT1T00001.htm