2009年02月08日(日) 01時34分
スーパーボウル周辺に垣間見えたオバマ効果(産経新聞)
米プロフットボール(NFL)のチャンピオンを決める「スーパーボウル」が行われた米フロリダ州タンパ。レイノルド・ジェームズ・スタジアムに地元バッカニアーズの姿はなかったものの、米スポーツ界で最も人気のあるイベントにピッツバーグとアリゾナ州から出場した両チームのファンも交えて盛り上がった。
スーパーボウル出場をかけて各チームが熱戦を繰り広げる間も、1月10日から3週間、タンパではスーパーボウルに向けてイベントが各所で相次いで開催された。コンサートから子供たちのための遊技場、NFLの歴史をたどる展示会と、内容は多岐にわたり、地元の商工会議所や、水族館といった既存の施設も協力して地元経済を潤わせた。
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もう一つ重要なのが、準備や試合当日の作業を行うボランティアだ。米国でのスポーツはプロでも、それぞれに本拠地となる地域で地元住民が試合を支えている。イチローが活躍する米大リーグ(MLB)のマリナーズもシアトルの本拠地、セーフコ・フィールドでファンと対応するのはボランティアだ。一時的でも地元の雇用に貢献する。
タンパはメキシコ湾を臨むフロリダ半島西部の海沿いにあり、温暖なフロリダ州にあって、荒々しい大西洋に面したマイアミと違い、静かな湾内にビーチが広がる優雅な土地柄だ。だが、最近は政治からスポーツと、メディアをにぎわすことが多かった。前回2001年のスーパーボウルはブッシュ前政権発足直後だったが、今回はその盛り上がりにオバマ政権の誕生に通じるところを感じさせた。
まずは米大リーグ(MLB)の地元球団、レイズ。創設初のリーグ制覇を果たし、ワールドシリーズに出場した。タンパ南のセントピーターズバーグにあるレイズの本拠地、トロピカーナ・フィールドでのワールドシリーズは序盤の2試合で終わったものの、スーパーボウルと合わせて米2大スポーツの一大イベントが同じシーズンに訪れることはまれだ。
レイズの大躍進は米大統領選挙にも波及した。フロリダ州は大統領選での選挙人の数が25人と多く、勝敗のカギを握る激戦になることが多い。引退した高齢の共和党支持者や、カリブ海からの中南米系(ヒスパニック)の移民、黒人が混在しているためだ。レイズのワールドシリーズ出場で盛り上がるタンパに民主党の大統領候補だったバラク・オバマ氏が乗り込んだのもうなずける。
2000年の大統領選では、共和党のジョージ・W・ブッシュ候補と民主党のアル・ゴア候補の戦いはフロリダ州での法廷闘争にもつれこみ、かろうじてブッシュ氏が制した。今回の大統領選では民主党が奪い返している。タンパもフロリダ州の一角にすぎないが、2000年の選挙では州北西部が焦点になったことを思うと、あなどれない地域だった。
大統領選の余韻はスーパーボウルを盛り上げる大物ミュージシャンの顔ぶれに残っていた。試合前に国歌を歌った女優で歌手のジェニファー・ハドソンは一家の悲惨な事件で母らを失い、全米から弔意を受ける一方、オバマ氏の地元シカゴの出身で、オバマ氏と同じ黒人(アフリカ系アメリカ人)の人気者だ。
試合前に登場したジョン・レジェンドは2006年にグラミー賞を受賞したR&Bの人気黒人歌手で、オバマ氏の選挙集会を盛り上げてきた。ハーフタイムショーで往年のパフォーマンスをみせたロックの大御所、ブルース・スプリングスティーンは白人としてオバマ氏を推し、オバマ政権誕生の一つの象徴となった。
タンパは1539年にスペインの探検家、エルナンド・デ・ソトが訪れた以降も先住民が暮らす平穏な港町だった。米国が1821年にフロリダをスペインから買い取り、1845年に米国の州になると、19世紀末に鉄道の延長とたばこ産業の進出を機に近代的な街へと歩み出した。それもいまや歴史地区に名残があるだけで、その後のフロリダの土地ブームも終わり、観光地となっている。
タンパにまつわる話題は目立たないものの、1898年の米西戦争で出兵の拠点となり、当時のシオドア・ルーズベルト大統領が有名な騎兵隊「ラフ・ライダーズ」を組織した場所だ。MLBでは、闘将、ルー・ピネラ監督の出身地で、西から南にかけてセントピーターズバーグのあるピネラ郡と隣接している。街中のハイドパークはシカゴにある同名の公園にちなんで名づけられた。(蔭山実)
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