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2009年02月08日(日) 01時00分

政府「地熱発電」普及促進 3倍程度の拡大目標に産経新聞

 政府は、火山国・日本が豊富に持つ“純国産”のクリーンエネルギーでありながら、ハードルが多く開発が進まない「地熱発電」の普及促進に乗り出す。今春にも発電量を2030(平成42)年までに現在の3倍程度に拡大する目標を打ち出す。また電力会社に地熱発電の電気の買い取りを義務付ける「新エネルギー利用特別措置(RPS)法」の対象に認定することで、開発を後押しする。開発が制限される国立公園内の熱源を公園外からパイプを通して利用する開発手法を認めることも検討していく。

 地熱発電は地下から熱水をくみ上げ、蒸気にしてタービンを回すシステム。発電時に二酸化炭素(CO2)を発生しないうえ、半永久的に利用できるクリーンエネルギーだ。

 国内では昭和41年に岩手県で第1号が稼働。鉱山開発ノウハウを持つ三菱マテリアルなどの非鉄金属会社や九州、東北などの電力会社が参入し、主要施設で全国18カ所にある。ただ、発電能力は計約53万キロワットと、小規模な原子力発電1基分しかない。

 「温泉枯渇」を懸念する熱源近くの地元温泉街による反対のほか、国立公園内に熱源があることや開発コストが高いことなどが普及の障害となっている。

 国の産業技術総合研究所によると、全国に2000万キロワット分以上の熱源があるとみられている。業界団体の日本鉱業協会などが「利用した熱水は地下に戻しており、温泉には影響がない」とPRし有効活用を訴えているが、現在全国で93万キロワット分の発電所が開発待ちの状態にある。このため、経済産業省では国としても普及に向けた環境整備が急務と判断した。

 RPS法の対象に認定されると、電力会社による買い取りを前提とした事業化が可能になる。現行法も地熱を認定対象としているが、「利用した後に戻しても、いったんはくみ上げるため、環境に影響を与えるとして認定してもらえない」(業界関係者)という。実際、認定は小型発電施設1基にとどまっている。

 このため、経産省は同法の運用を弾力化し、温泉など周辺の環境に影響が及ばないことが調査などで確認できれば、積極的に認定していく方針だ。

 また最近はボーリング技術の高度化により、国立公園内の熱源を区域外から利用することも可能になっており、RPS法と同様に、環境への影響を調査した上で、こうした開発手法も認めていきたい考えだ。

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