2009年02月08日(日) 00時38分
波紋呼ぶ週刊新潮「犯人手記」 朝日新聞阪神支局襲撃事件(産経新聞)
週刊新潮(新潮社)が、昭和62年に発生した朝日新聞阪神支局襲撃事件の実行犯を名乗る男性の衝撃的な告白手記を連載し、波紋を広げている。被害者側の朝日新聞が紙面で「事実と異なる」と2回にわたって反論、ライバル誌の週刊文春(文芸春秋)も手記の検証記事を掲載するなど異例の展開をみせている。「赤報隊」から犯行声明が出た同事件は既に公訴時効が成立しているものの、実態解明を求める声は今も少なくない。警察当局は男性の告白に冷ややかな反応を示すが、果たして真相は…。
■「事実と異なる」
「ともかく、私は結果を出す必要があったのです。記者を1人か2人殺す、という結果を」
週刊新潮2月5日号(1月29日発売)に、〈私は朝日新聞「阪神支局」を襲撃した!〉と題した6ページの特集記事が掲載された。「私」とは「島村征憲(65)」なる人物。記事によると、島村氏は阪神支局襲撃など4事件の実行犯であることを認め、共犯者の自殺に責任を感じて真相を告白したとしている。犯行は依頼されたもので「動機は金だった」という。
この報道に対し、朝日新聞は島村氏が実行犯であることを即座に“否定”。週刊新潮が発売された当日の夕刊社会面に「週刊新潮に手記 事実と食い違い」との記事を掲載。週刊新潮編集部から島村氏の証言内容について問い合わせを受け、「客観的事実と明らかに異なる点が多数ある」と回答したことを明らかにした。
関係者によれば、事件にはいくつかの「キーワード」があり、島村氏の告白は合致しないのだという。
■「右翼」と「米大使館」
翌週の週刊新潮2月12日号(5日発売)では、事件の背景に言及した。記事によると、赤報隊による犯行声明の作者は、平成5年に朝日新聞東京本社役員応接室で拳銃(けんじゅう)自殺したことでも知られる右翼活動家の野村秋介氏で、島村氏に「朝日を狙ってくれ」と依頼したのは在日アメリカ大使館の男性職員だとした。記事の最後は「以下次号」となっており、連載は続くとみられる。
一方、朝日新聞は今月5日の朝刊社会面で、島村氏が週刊新潮に証言した犯人の服装や言動が、被害者の証言と「明らかに異なる」と再び指摘。「事件の被害者や弊社社員の名誉を棄損(きそん)する記述などがあれば、厳正に対処します」と牽制(けんせい)した。
産経新聞の取材に、朝日新聞大阪本社広報部は「週刊新潮の連載が終了した段階で内容を検証し、本紙で明らかにします」と回答している。
また、週刊新潮と同日発売の週刊文春2月12日号は〈朝日が相手にしなかった「週刊新潮」実名告白者〉との記事を掲載。朝日新聞が週刊新潮よりも前に、網走刑務所に収監中だった島村氏を取材した結果を紹介し、凶器の散弾銃に関する証言に整合性がなかったことなどから島村証言の信憑(しんぴょう)性をただした。
週刊新潮編集部は、証言を「事実」と判断した根拠について、「当該記事は連載中でもあり、コメントは差し控えさせていただきます」としている。
■「聴取予定なし」
「捜査線上に浮かんだことはない」(警察幹部)。
島村氏の実行犯説に警察当局も冷ややかだ。島村氏は記事中で「池袋で右翼団体をやっていた」という。警察当局は島村氏が指定暴力団関係者だったことは把握していたが、右翼団体構成員とは認定していない。
警察幹部は「(連載の)1回目を見ても、事実と認定できる新しいものはない」とし、捜査の一環として島村氏から事情聴取する可能性についても「公訴時効が完成しており、その予定はない」と言い切る。
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