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2009年02月08日(日) 18時49分

民主勝利なら? どうなる日本の「守り」産経新聞

 政府は今年末の閣議決定を目指して防衛計画の大綱改定の検討を始めたが、今後の議論の行方は政局の影響も受けそうだ。新大綱を策定するため改定論議をする有識者による「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長・勝俣恒久東京電力会長)は、6月に結論を出す方針ではあるものの、次期衆院選は来年度予算案成立後の4月に行われる可能性がある。また、衆院議員の任期は9月までのため、新大綱の閣議決定前には必ず衆院選が実施される。選挙結果の予測では、野党第一党・民主党優位との見方が強く、同党主導の新政権樹立が取りざたされている。だが、民主党の防衛政策が明確ではないだけに、麻生政権の下でメンバーが選ばれた有識者懇が結論をまとめても、民主党主導の政権の方針とは矛盾し、提言が宙に浮く可能性もある。

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 今後の防衛政策の指針となる新大綱の策定に向け、急激に国防費を伸ばす中国の動向を踏まえた自衛隊の再配置や1月のオバマ米政権誕生を受けた日米協力のあり方が主な検討課題となる。また、最近長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の発射準備を進めているとみられる北朝鮮への対応も重要なテーマだ。このほか、日本の武器輸出3原則の見直しや陸上自衛隊の態勢なども論点となりそうだ。

 この中で、中国の動きをめぐっては、「中国の国防費の伸びにあわせて、日本の防衛力の整備を進めないと、地域の軍事バランスが崩れてしまう」(元防衛庁幹部)との懸念がでている。また、中国はソマリア沖の海賊対策の一環として、日本より早く海軍艦艇の派遣を決めたのをはじめ、最近の動きは活発だ。筆者が約5年前、防衛庁(現・防衛省)を担当していたころに比べても、中国の能力は飛躍的に高まっており、警戒感は一層強まっている。

 政府は、冷戦時代、旧ソ連が北海道に侵攻した場合に対応するため、北の守りを重視した自衛隊の配置を進めてきたが、ポスト冷戦時代での中国の台頭を踏まえて、西方へのシフトを始め、今後さらにこれを推進することを検討していくことになりそうだ。

 このほか、新たな日米協力のあり方をめぐっても、政府サイドからは、「米国は中東、アフガニスタンで課題を抱えており、日本が主体的に動かなくてはならない場面が増えるだろう」(元防衛庁幹部)と、アフガンの治安安定や海賊対策などで、より積極的な貢献の必要性を示唆する指摘もでている。

 さらに、日米の協力関係を強化するうえで避けることのできない集団的自衛権の行使をめぐる憲法解釈の見直しを政府に求めた「安保法制懇」の提言も、たなざらしのままになっている。それだけに、この問題への対応も論点になりそうだ。

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 だが、こうした課題について、小沢一郎氏が代表を務める民主党は、政権を奪取した場合はどのように取り組もうとしているのかはっきりしない。小沢氏は中国に言うべきことは言うという立場をとっているが、長年、中国との交流にも力を入れてきている。このため、「小沢首相」になったときに、中国に対してどのように臨むのか、十分説明しているとはいえない。

 また、中国に対して、対決姿勢を強めることに関しては、自民党内にも、「まずは外交努力によって、中国との緊張緩和に努めるべきだ」(沖縄県選出国会議員)との声もある。

 中国の国防費増への対応は必要だが、政府・防衛省などはその方針を進めるにあたっては、十分に情報を提供し、慎重派を説得する説明責任があるともいえる。

 このほか、新たな日米協力のあり方をめぐっても、民主党がどのように進めようとしているのか、明確ではない。たとえば、米国が力を入れるアフガン問題に関連して、小沢氏はアフガンの国際治安支援部隊(ISAF)への自衛隊派遣に前向きな姿勢を示している。だが、自民党出身者から旧社会党出身者まで抱える民主党内には、この問題について温度差がある。集団的自衛権についても同様だ。さらに、民主党が、かつて非武装中立論や自衛隊違憲合法論のあった旧社会党の流れをくむ社民党と連立を組むことになれば、その防衛政策はさらに”ゆがむ”可能性がある。

 民主党の明確ではない防衛政策に対しては、防衛省・自衛隊内にも一抹の不安を覚える向きもある。制服組の中には、「民主党が政権を獲得した場合、十分な協議もないままで拙速にISAFへの参加を決めることになれば、問題が残る」(自衛隊幹部)との声もでている。

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 日米安保体制の下、国土防衛を中心に取り組んでいればよかった冷戦時代とは違い、防衛省・自衛隊は、最近の海賊対策をはじめ、テロとの戦い、核・生物・化学(NBC)兵器への対応など多様な課題への対応を求められるようになった。しかし、日本を取り巻く経済情勢は厳しく、防衛予算も限られている。こうした中、防衛政策も優先順位をつけて取り組まなくてはならない面もでてきた。そうした中、当面の防衛政策の基本となるのが、新大綱といえる。それだけに、次期衆院選の時期がいつであれ、政府・与党内や国会などで、新大綱に関する議論をしっかりと深めてほしい。特に民主党は、次期衆院選で政権交代を目指すのであれば、新大綱の対案を示すぐらいの意気込みが必要ではないか。また、党内の考えの開きが大きく、案がまとまらない場合には、せめて新大綱に関する課題や問題点を国会で明らかにしなければ、野党第一党としての存在意義が問われよう。

 制服組の一人は「新大綱は5年とはいわずこれから10年の防衛政策を決める大事なものだ」(自衛隊幹部)と指摘する。

 有識者懇をはじめ新大綱をめぐる論議がどのように進んでいくのか、よく見ていきたいと思う。(今井大介)

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