【シドニー8日共同】オーストラリア南東部ビクトリア州の数十カ所で発生した森林や原野の大規模火災は延焼を続け、同州警察が八日、少なくとも八十四人の死亡を確認したと発表した。消防当局によると、一般住宅や公共施設など約七百の建物が焼失、被害面積は三十万ヘクタール以上に達した。
今回の人的被害は、同州などで七十五人が死亡した一九八三年の「灰の水曜日」と呼ばれる火災の規模を上回り、オーストラリアで過去最悪の森林・原野火災となった。警察は、今回の火災の一部は放火の可能性があるとみている。
ラッド首相は八日、消火活動支援などのため陸軍に出動準備を命じ、同州の州都メルボルン北方の被災地を視察。被災者支援に一千万豪ドル(約六億二千万円)を拠出すると発表した。
死者の中には車で逃げる途中で炎に包まれたとみられる人も多い。建物の八割が焼失したメルボルン北東約五十キロの町キングレークの被災者らはロイター通信に「火が弾丸のように迫ってきた」と恐怖の瞬間を語った。
火勢は八日、気温低下に伴い一部で衰えたが、メルボルン北方など数十カ所で燃え続けており、鎮火には数日かかる可能性もある。
ビクトリア州は真夏を迎えた一月末から記録的猛暑を記録し、地元メディアによると、メルボルンの七日の気温は観測史上最高の四六・四度。同国南部は例年、森林火災が多く、今年はここ数年の干ばつの影響による乾燥や強風も重なり被害が広がった。同州北方のニューサウスウェールズ州でも森林火災が多発している。
【写真説明】7日、オーストラリア南東部ビクトリア州で起きた大規模な山火事で消火できない炎から離れる消防車(AP=共同)