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2009年02月07日(土) 19時25分

奇術のようにフッと… 推理作家の泡坂妻夫さん死去産経新聞

■7日、東京都豊島区の沙羅ホール

 推理小説と奇術の共通点である「トリック」に魅せられ、2つの世界を融合したからくり細工のような精緻(せいち)な作品を残した。

 原点は生まれ育った東京・神田の縁日で見た光景。人形や鉛筆がまるで生きているかのように自由に動いていた。見えないくらい細い糸で物を操る「ヒョコ」という伝統芸だった。

【フォト】奇術を取り入れたトリッキーなミステリー小説などで支持を集めた泡坂さん

 幼なじみで小学生のとき、埼玉県へ一緒に集団疎開したという中村●(=王へんに秀)一(しゅういち)さんは「小学校のころから人を喜ばせるのは天才的だった」と述懐する。本名の厚川昌男(あつかわまさお)の文字をパズルのように入れ替えた泡坂妻夫のペンネームにも、そんな遊び心がうかがえる。

 祖父の代から続く呉服に家紋を書き入れる紋章上絵師(うわえし)をしながら創作活動を続け昭和51年、「DL2号機事件」が第1回幻影城新人賞佳作に。「乱れからくり」で日本推理作家協会賞、本業の紋章絵師としての知識を生かした「蔭桔梗」で直木賞を受賞した。

 奇術師として後進のマジシャン育成にも力を入れ、厚川昌男賞を創設。同賞の受賞者、ふじいあきらさんは、「マジックの出来は良くなかったのですが、『この賞は僕が好きな奇術にあげるものだから』と言って選んでいただいた。とても自信がつきましたねもっとお話がしたかった」と目頭を押さえた。

 3日、死去。享年75。出棺を前に妻の耀子(ようこ)さんは、「突然のことでしたので大変驚きましたが、人を驚かすことが好きな主人だったので今ごろ笑っていると思います」とあいさつした。参列者の一人は「何だか奇術のようにフッと消えちゃったなあ」とつぶやいた。(伊藤徳裕)

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