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2009年02月07日(土) 18時16分

安くて味様々、家族連れに人気…ホルモン焼き開店相次ぐ読売新聞

 ホルモン焼きの新規開店が相次いでいる。安くて多様な食感やヘルシーさがウケて、家族連れなどに人気という。

 かつての「おじさんの食べ物」のイメージは変わったようだ。

 ハツ、センマイ、アカセン、ハチノス。壁にメニューがびっしりと張られた東京・東大和市の飲食店「ホルモン焼道場『蔵(くら)』」。週末の夜、にぎわう店内に肉を焼く煙が立ちこめていた。

 七輪を囲んでいた5人家族の会社員塩川直樹さん(41)は、1週間前にも来店したばかり。その時に初めてホルモンを食べた妻の智恵美さん(41)は「見た目から、ちょっと大丈夫かな、と心配だった」というが、今回は「いろんな食感が楽しいし、コラーゲンが美容に良さそう。しっかり食べても焼き肉より2〜3割安い」。

 最初は恐る恐るだった長女の千尋ちゃん(6)も「コリコリしておいしい」と笑顔をみせた。

 メニューには、焼き肉店で定番のカルビやロースもあるが、メーンはあくまでも、30種にも上る牛や豚の内臓。同店を運営するビーンズコーポレーション(東大和市)は2004年から07年までに6店を設けた後、昨年は景気後退もあり新規出店を控えていた。

 しかし、既存店で売り上げが伸びていることから、今年は2〜3店増やす方針に転換。「ホルモンは種類も食感も多様。脂もしつこくなく、毎日でも食べられます」と事業統括運営部長の林一幸さん(47)はPRする。

 居酒屋チェーンの「白木屋」や「魚民」を展開する「モンテローザ」(東京都武蔵野市)も昨年11月、七輪で焼くホルモン店を初めて開店。この1、2月にも首都圏で相次いで2店を開店し、その後も新規展開していく計画だ。「かつては『グロテスク』と敬遠されていたホルモンが、ヘルシー志向もあり、女性や家族連れに抵抗なく受け入れられている」と同社総務企画課の河辺直さん(30)。

 日本畜産副産物協会によると、食肉処理される牛は年間約120万頭、豚は約1600万頭で、ここ数年大きな変動はない。

 しかし、都内の卸業者92社でつくる芝浦畜産臓器協同組合理事長の羽根田実さん(72)は、「昨年秋ごろからホルモンの需要増を実感している」と話す。卸価格は1年半で4割から7割ほど上がったという。「それでも安い。不況時には、安くておいしいのが一番だからね」。脱サラを目指す人などから、ホルモン店開店に向けた問い合わせも多いという。

 最近は、デパートや駅ビルの食品売り場で牛や豚の内臓が扱われるケースも増えた。羽根田さんは「昔は、売れないからタダ同然でソーセージ業者に譲ったこともあるし、バブル期には見向きもされなかった。それが今は若い人や女性にも食べてもらえて、うれしい」としみじみ語る。

 捨てるという意味の“ほうるもん”と揶揄(やゆ)されたこともあるホルモンだが、そんな時代も今や昔。家族や友だちと一緒にたっぷり食べて、明日への活力としようか。(杉野謙太郎)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090207-00000050-yom-soci