【ワシントン7日共同=杉本一朗】米政府は九日、包括的な金融安定化策を発表する。金融機関の不良資産から発生する損失の一部を政府が肩代わりする保証制度や、最大一千億ドル(約九兆二千億円)の公的資金を活用した住宅ローンの借り手支援策が柱。財務省は七日、消費者や中小企業に資金が回るようにして、経済を活性化するのが狙いと説明した。
ガイトナー財務長官が九日午後(日本時間十日未明)、記者会見して発表する。
ブッシュ前政権は、金融対策の公的資金枠七千億ドル(約六十四兆四千億円)のうち半分を金融機関などに直接資本注入した。しかし信用収縮は緩和されず、市場安定の効果が薄いため、オバマ大統領は前政権の政策を見直し、追加対策を打ち出す。
米政府と議会は住宅対策に五百億—一千億ドルを充てることで合意済み。連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)が焦げ付いた住宅ローン債権を購入。元本削減や返済条件の緩和で、借り手を支援する案が有力になっている。
損失保証制度は、損失の拡大に伴い銀行の自己資本が目減りするのを防ぎ、貸し渋りを改善する狙いがある。一方で、巨額の財政負担が必要になる不良資産買い取り機関(バッドバンク)構想は当面、見送られる見通しになった。
連邦準備制度理事会(FRB)が今月開始する自動車、教育、クレジットカードなどの各ローン担保証券の購入支援融資制度を拡充。米メディアによると、政府が公的資金で支援し、購入枠を現行の二千億ドルから五千億ドル(約四十六兆円)に広げる。
オバマ政権は追加金融対策に先立つ四日、国民の金融界批判に配慮して、公的資金で救済を受ける金融機関の経営者報酬を抑制する規制策を発表した。