河川のはんらんで浸水する恐れのある範囲などを示す洪水ハザードマップを、法律で作製・公表が義務付けられた全国千二百三十五市区町村のうち31%で整備していないことが七日、国土交通省の調査で分かった。都道府県別の作製済み自治体数の比率も、鹿児島の100%に対し、最低の神奈川は27%と地域差が三倍以上に達している。
自治体の財源や人員の不足が原因で、二〇一〇年三月末までに対象自治体に完備するとしていた国交省の目標達成は困難な見通し。高潮や津波、土砂災害を対象にしたマップ作製も遅れが目立っており、普及に向けた国の後押しが求められそうだ。
洪水ハザードマップは、豪雨時にどこに避難すればよいかを判断することなどに役立ち、ソフト面での防災対策の柱。作製・公表は、福島や新潟、福井県で計二十人が亡くなった〇四年の豪雨被害を受け、〇五年七月に施行された改正水防法で義務付けられた。
対象は河川に近く堤防の決壊などで浸水の恐れがある地域を抱える市区町村。国交省が〇八年十二月末時点でまとめたところ、三百八十九自治体が未整備だった。国交省は個別の市区町村名を公表していないが、都道府県別の作製率では神奈川が二十六市町のうち七市町と最も少なく、高知も33%、長野も38%にとどまっている。全国平均は69%。
作製が遅れている自治体からは「予算上の制約や人手の都合上、一朝一夕には進まない」「大きな洪水がなくデータ収集が困難で、職員も不慣れな仕事に手間取っている」といった声が上がっている。
国交省は「住民が安全に避難できるよう、一刻も早く作製してほしい」と、未整備の自治体に呼び掛けている。