2009年02月07日(土) 03時03分
ウォン天・ドル天構想も、波容疑者「マルチ人生」30年(読売新聞)
「今の世界恐慌から抜け出すには、俺がノウハウを伝えるのが早道なんだ」−−。3万7000人から1260億円もの資金を集めた「L&G」(東京・新宿、破産手続き中)の組織的詐欺事件で、逮捕された同社会長の波和二(かずつぎ)容疑者(75)は逮捕直前までそう言い続け、謝罪や反省の言葉は口にしようとしなかった。
1970年代からマルチ商法を手がけ、付いた呼び名は「マルチの祖」。社内ではワンマンで恐れられ、同社の破綻(はたん)間際まで、若い女性を引き連れる派手な生活を送っていた。
「円天は、貧困層をなくす神仏からの贈り物だ」「俺のブログを読んだ共鳴者が世界中から集まっている」。逮捕前日の今月4日夜。波容疑者は、東京・早稲田の自宅マンションに報道陣を招き入れ、焼酎のグラスを片手にまくし立てた。
波容疑者は、その前夜も顔見知りのテレビ局の女性記者らを前に自宅で長時間酒を飲んでおり、5日早朝の逮捕直前には、自宅近くの小料理屋で見知らぬ記者の質問には一切答えず、3時間近く女性記者らに対し自説を語った。
波容疑者は1933年5月に三重県で生まれた。都内の私大に進学し、70年代初め、自動車用品販売会社「APOジャパン」(東京)の副社長に就いたことをきっかけにマルチ商法にかかわる。同社は、車の排ガス除去装置の販売を巡って、25万人から出資金を集めたマルチ商法の先駆けだった。
強引な勧誘が社会問題化し、同社が破綻に追い込まれたのは75年。波容疑者は破綻前に「天然の水を作る魔法の石」を売る「ノザック」(同)を設立、一時は年20億円以上を売り上げた。しかし78年にはノザックも倒産、波容疑者は同年10月、魔法の石を採る山の共同所有を持ちかけて金をだまし取ったとして詐欺容疑で逮捕され、実刑判決を受けた。
出所後の87年8月、波容疑者はL&Gを設立する。当初は健康布団販売のマルチ商法が目的。当時の役員や幹部には「リッチランド」(2007年1月摘発)や、「経済革命倶楽部」(97年2月摘発)など大型詐欺事件に関与した人物も含まれ、周囲から「マルチの祖」と呼ばれるようになった。
社員60人ほどのL&Gの社内でワンマンとしてふるまい、「客の苦情を説得できないようならやめろ」とどなることもあったという。
波容疑者が30年間のノウハウをつぎ込んで考案したのが疑似通貨「円天」システムだった。会員向けの説明会では、「円天」を韓国や米国にも広める「ウォン天」「ドル天」構想も披露。荒唐無稽(むけい)な内容に首をかしげる会員を、こう言って説き伏せていた。「エジソンもはじめはペテン師と呼ばれていたんだ」
会員が急増した04年ごろからは、飲食店で接客していた女性をスカウトし、「コスモガール」と呼んで説明会の案内役や秘書として働かせた。同社関係者は「高額な報酬を渡していたようだ」と証言する。休日には大勢のコスモガールを引き連れてゴルフ場に通い、自家用の数台のベンツは、「73(ナミ)」というナンバーだった。
出資した700万円のうち560万円を失った北関東の60歳代の女性は、こうした実態を知って怒りが収まらなかった。「こんな男にだまされたのは、信じた自分が悪いのだろうか」(「L&G問題」取材班)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090207-00000008-yom-soci