2009年02月07日(土) 23時44分
弁護士の成果に“光” 大阪弁護士会、会報に名前公表(産経新聞)
大阪弁護士会は今年から、警察に犯人として逮捕された容疑者を不起訴処分に導いた弁護士の名前を、毎月1回発行する会報で公表するユニークな取り組みを始めた。起訴前の捜査段階で国選弁護人を依頼できる対象事件が5月から拡大され、特に無実を訴える事件で容疑者の唯一の味方となり、疑いを晴らす弁護士の役割は大きい。無罪判決ほどの派手さがなく、これまであまり“光”が当たらなかった成果を評価する試みとして注目を集めそうだ。
1月末に発行された会報で公表されたのは、昨年11月の1カ月間に検察官が罪を犯した疑いがない、あるいは十分でない−などとして不起訴にした窃盗や恐喝など12件の事件。いずれも弁護費用援助制度を利用した容疑者から、事件を受任した大阪弁護士会所属の弁護士12人の名前や罪名などのリストが掲載されている。
そのうちの1人、池上健治弁護士は10月中旬、当番弁護士として、窃盗容疑で警察に逮捕された50代男性に接見した。男性は一時同居していた女性の家を出る際、現金約1万円などを持ち出したとして女性から告訴されていたという。
男性は「自分のものを持って出ただけで窃盗ではない」と否認。池上弁護士は正式に弁護人として受任し、男性の母親から直接事情を聴くなど調査を行った。その結果、現金は男性が母親から受け取ったものだったことなどが判明、警察に説明したという。男性は不起訴となり釈放された。
「不起訴が当然の事件だが、弁護人の助言がなければ起訴されたかもしれない。裁判になれば、男性に有罪判決が下る可能性もあった」。池上弁護士はそう振り返った上で「今後は名前や罪名だけでなく、どういう弁護活動によって不起訴にいたったのかという詳しい経緯も掲載すれば、他の弁護士にとっても参考になるのではないか」と話す。
法務省によると、平成19年に検察庁が受理した事件の不起訴率は約60・4%。嫌疑が十分でも犯罪の軽重や情状などを考慮して起訴しない「起訴猶予」も含まれるため数値は高い。一方、同年の全国の地裁判決での無罪率はわずか約0.14%。いったん裁判になれば無罪判決を得るのは極めて難しく、「起訴されるかどうかが運命の分かれ道」とも言われる。
容疑者段階から国選弁護人がつく「被疑者国選弁護制度」が18年10月からスタート。殺人など重大事件が対象だったが、5月からは「刑の上限が3年を超える事件」まで拡大され、大半の事件が対象となるため、捜査段階での弁護活動がますます重要になる。
同会は今月末発行の会報で昨年12月に不起訴をとった弁護士名を掲載する。上野勝会長は「弁護士にとって不起訴処分は最も価値がある成果。今後も公表を続け、会員同士の情報交換や意識啓発の助けにしたい」と話している。
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