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2009年02月07日(土) 21時36分

<ガザ>ハマスとアッバス議長、復興を巡り支持争う毎日新聞

 【エルサレム前田英司】イスラエル軍の攻撃で大きな被害を受けたパレスチナ自治区ガザ地区の復興を巡り、ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスと、対立する穏健派ファタハ出身のアッバス自治政府議長がしのぎを削っている。復興を主導すれば住民の支持を引き付け、今後のガザ統治の行方も左右するためだ。ハマスが早々と独自の支援を始める一方、ガザに足場のない議長側には障害が多く、苦戦している。

 エジプトとガザ南部の境界、ラファの検問所で5日、カイロからガザに戻るハマス幹部がエジプト当局に一時ガザ入りを阻まれた。

 幹部は、かばんに現金約1100万ドル(約10億円)を詰めて持ち帰ろうとしていた。イスラエル軍の攻撃で被害を受けた住民への補償金に充てようとした可能性が強い。10億円の持ち出しは認められず、エジプトの銀行に預け入れられた。

 現金は一部の外国勢力の支援との見方もあるが、出所は不明だ。

 一連のガザ攻撃では4000軒以上の家屋が全壊し、復興費用は推定20億ドル(約1840億円)に上るとされる。06年夏の第2次レバノン戦争では、同国のイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラがイランやカタールの支援で復興を主導し、支持を広げた。

 ハマスは先月18日の「停戦」を受け、月末には家を失ったハマス支持者に1家族当たり4000ユーロ(約47万5000円)の小切手を配り始めた。これに対し、アッバス議長側は今月4日、総額6億ドル(約550億円)の復興計画を発表して対抗。しかしハマス支配下のガザでは復興事業の具体化を国連機関などに頼らざるを得ない。しかも、厳しいガザ封鎖政策で国際社会からの緊急援助物資さえ到着が遅れている。

 最新の世論調査ではガザ攻撃後、ヨルダン川西岸、ガザ地区双方のパレスチナ人の間で「ハマスを信頼する」という人が27.7%(昨年11月調査時16.6%)に増加し、ファタハの26%(同31.3%)を逆転した。また、現時点で評議会(国会)選挙があった場合、28.6%がハマスに投票すると答え、ファタハの27.9%を上回った。

 【ことば】ハマスとファタハ

 アッバス自治政府議長が率いるファタハは、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸を拠点にイスラエルとの和平を模索。ハマスはイスラエルの存在を認めず武装闘争と住民支援の福祉活動を展開、07年にガザ地区を武力制圧し支配している。両者の和解を目指しエジプトなどが仲介を行っている。

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