医学部卒業生のうち出身大学がある都道府県に残って研修医となったのは49・1%と、二人に一人は他地域へ流出している実態が七日、文部科学省の二〇〇八年度の定着状況調査で分かった。今回の調査に合わせて調べた〇三年度は57・8%で8・7ポイント低下していた。
こうしたデータを同省が分析したのは初めて。三十三都道府県で定着率が〇三年度より低下したが、特に北陸や山陰、九州などの十二県は20—35%と地元確保が難しくなっている状況が判明、地方の医師不足や地域偏在を示した。背景には豊富な臨床例が経験でき、条件の良い都市部などに地方の人材が集まっていることがあるとみられる。
調査は昨年九月に実施。過去のデータがない東京や大阪の計三校と出身地に戻ることが条件の入学枠がある自治医大を除く、国公私立医科系七十五校について、卒業直後の動向を調べた。
都道府県別(データは5%刻みで分析)で〇八年度の定着率が最も低かったのは島根と宮崎の20—25%。25—35%は青森、富山、福井、鳥取、大分、宮城、高知、長崎など。
高かったのは65—70%の北海道と大阪で、60—65%の神奈川、愛知、奈良、熊本などが続いた。
〇三年度との比較で低下幅が大きかったのは千葉、鳥取、島根、山口で25ポイント減だった。上昇したのは秋田、栃木、長野、沖縄など七県でうち和歌山は15ポイント上昇し、60—65%となった。
地域医療を担う人材確保のため大学側も約三十校で地元高校生らを対象に地域入学枠を設けているが、文科省は「このまま低下が続けば、医師不足に悩む地方はさらに深刻な事態となってしまう」としている。
医師の不足や偏在をめぐり、政府は医学部定員増のほか、二〇一〇年度以降に医療機関の募集枠制限などで特定の地域に人材が集中しないよう、臨床研修制度を改める方針を固めている。