2009年02月07日(土) 20時20分
司祭が信徒に“セクハラ博愛” 小学生の娘まで(産経新聞)
「気の毒な境遇の女性に、愛を与えたかった」−。信徒の女性(43)にセクハラ行為を繰り返したとして、大阪府警茨木署が強制わいせつ容疑で逮捕したカトリック茨木教会(大阪府茨木市)の司祭、井上博嗣容疑者(74)。事件は、約70回にわたってキスを強要され、たまりかねた女性からの相談で発覚した。茨木署は「司祭の地位を利用した悪質な犯行」とみているが、井上容疑者は取り調べや教会側の内部調査に対し「海外では自然なあいさつの仕方」「わいせつな意図はなかった」などと犯意を否認しているという。神に仕える聖職者が引き起こした不祥事。彼は、一体どこで“博愛のボタン”を掛け違えてしまったのか。
■引っ越しがきっかけに
大阪北部の茨木市中心部の閑静な住宅街にあるカトリック茨木教会。グレーを基調としたシックな建物に、荘厳な十字架がそびえ立つ。事件の舞台となったのは、井上容疑者が暮らすチャペル隣接の司祭館。セクハラは昨年10月、教会近くに女性が引っ越してきたのがきっかけとなって始まった。
「愛しています」。耳元でそうささやかれ、抱きしめられた女性は思わず身をよじらせた。「おかしいです。やめてください」と抵抗を試みたものの、井上容疑者は意に介さず女性の唇をふさいだ。こうしたセクハラは約2カ月にわたって続き、12月末には女性の小学生の娘にまで及んだという。
■生活を援助
井上容疑者はアメリカへの留学経験もあり、ミッションスクールの英知大(現・聖トマス大、兵庫県尼崎市)で学長を務めたほか、神戸海星女子学院大(神戸市)で教鞭を執ったこともあるベテランの聖職者。被害者の女性と知り合ったのは、大阪市内の教会を担当していた約8年前のことだった。
経済的に困窮していた女性に対し、井上容疑者はポケットマネーでカンパしたり、司祭館の清掃や食事の支度を依頼し、そのつど数千円のアルバイト料を渡すなどして生活を援助してきた。大阪・兵庫・和歌山の教会を管轄するカトリック大阪大司教区の松浦悟郎・補佐司教は、取材に対しこう語る。「親子でディズニーランドへ遊びに行くよう、10万円渡したこともあると聞いた。井上司祭は女性をふびんに思っていたようだが…」
女性がほぼ毎日教会を訪れていたのは、バイトのためだけではない。住んでいる家が手狭で洗濯物を干すスペースがなかったため、司祭館の物干し場を借りていたのだという。そのたびに井上容疑者のセクハラを受け続け、ついに今年1月15日、大阪大司教区に電話で相談したのだ。
「悪いことをしました。すぐにでも謝りに行きたい」。大司教区責任者の事情聴取に対して事実を認めた井上容疑者は、机をこすらんばかりに頭を下げ続けたという。
■恋愛感情を否定
しかし一方では、「女性は嫌がっていなかったと思う」「フィリピンや南米の信徒向けのミサでは、フレンドリーにハグ(抱擁)をするのが普通だ」などと釈明。キスや抱擁に及んだ動機について「女性がふびんで、かわいそうだったから」と繰り返し、恋愛感情を否定した。
捜査関係者は、被害を訴えた女性の心情についてこう説明する。「世話になっている負い目もあり、井上容疑者の執拗(しつよう)なセクハラを拒みきれなかった。それだけに、屈辱を感じ続けていたようだ。女性が処罰を求める感情は非常に強い」
今月5日に逮捕が報じられた後、茨木署には「そんなことをする神父さんではない」と井上容疑者を弁護する信徒の声も寄せられた。しかし一方で、ほかにも複数の匿名女性からセクハラ被害の相談を受けているという。同署は今後、事実関係の確認を慎重に進めていく方針だ。
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