巧妙なもうけ話で人を欺く利殖商法に、メスが入った。
高配当をうたい、主に中高年の女性から多額の資金を集めていた「L&G」の会長ら22人が組織的詐欺の疑いで逮捕された。
「1口100万円の協力金につき年36%の配当を支払う」「元本は保証」と宣伝していた。
協力金の額に応じて「円天」という疑似通貨を支給した。「円天市場」と名付けた会員限定のバザーや、インターネット上のサイトで、様々な商品と交換できるという仕掛けである。
こうして、2000年から07年までに、約3万7000人から約1260億円も集めていた。
被害に遭った主婦の一人は「高級ホテルに招待され、タレントのコンサートやフランス料理のフルコースを楽しむうちに信用してしまった」と語っている。だましの技巧を駆使したわけだ。
だが、組織の収入は会員の協力金だけである。出資を募っては、運用もせずに配当に回すだけという手法では、いずれ行き詰まるのは目に見えていた。
各地の消費者センターには、すでに04年ごろから、「怪しげな勧誘をしている」という情報提供や苦情が寄せられていた。
それにもかかわらず、東京都が立ち入り調査したのも、警察が捜索に入ったのも、「L&G」が破綻(はたん)した後の07年10月になってからだ。放置している間に、被害が広がってしまった。
エビ養殖詐欺など、高配当を約束した架空投資話の摘発が相次いでいる。やはり長期間見過ごされていたため、集金額が数百億円規模に上る事件は珍しくない。
詐欺罪などで立件するには、綿密な捜査が必要で、時間もかかるが、利殖商法を監視する制度がなかったことも背景にある。
こうした教訓から、金融商品取引法が07年9月に施行され、一般投資家から出資を受ける投資事業については、金融庁への登録が義務づけられた。
犯罪事実が不明でも、無登録ならば、投資話で資金を集めただけで、懲役3年以下などの罰則に問うことができる。
悪質商法には素早い対応が求められる。警察庁や金融庁、消費者センターの連携強化も重要だ。
深刻な不況を逆手にとり、どんな悪質商法が出てくるかわからない。「うまい話、絶対もうかる話には必ず大きな落とし穴がある」と警察は警告している。各人が心すべきことである。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090205-OYT1T01251.htm