パキスタンのイスラマバード高裁は6日、核関連技術や資機材を拡散させた秘密ネットワーク「核の闇市場」を構築したとされ、事実上の自宅軟禁下に置かれていた同国の科学者カーン博士の軟禁を解除する決定を下した。
軟禁下で博士は外部との接触を制限されていたが、解除により「闇市場」の実態解明が進展することも期待される。しかし、同国の核開発や闇市場の全容を知る博士には軍などが依然圧力をかけ続けるとみられ、実際に自由な行動を認められるかどうかは不透明だ。
高裁決定は、博士が国内を自由に移動することを許可する一方、政府には博士の移動予定に合わせ厳重な警護を求めた。
決定を受け、カーン博士は同日、イスラマバードの自宅で「軟禁解除に努力してくれた政府内の友人に感謝する。近日中に知人を訪ねて旅行したい」と話した。また、共同通信に「裁判所の決定はわたしの汚名をそそいでくれた」と述べた。
博士は昨年、共同通信などに対し核拡散への軍の関与を指摘しているが、この日は、自宅前で記者団に対し「過去については語りたくない」と述べ、闇市場などについての言及を避けた。
カーン博士は、パキスタンの「核開発の父」として英雄視されていたが、2004年にリビアや北朝鮮に核技術を流出させたことを告白。ムシャラフ大統領(当時)は「個人の犯行」として自宅軟禁下に置き、ムシャラフ氏辞任後も軟禁状態が続いていた。
◆カーン博士 パキスタンの科学者。欧州の企業勤務時にひそかに取得した技術などを基に遠心分離機を開発、核兵器の原料となる高濃縮ウランの製造を行い核計画を推進した。同国は1998年5月、核実験に成功。イスラム圏で初の核保有国になり、博士は「核開発の父」として英雄視される。核技術売買の秘密ネットワーク「核の闇市場」を構築したとされ、2004年2月に北朝鮮やイラン、リビアに核関連機材や技術を拡散させたと告白。以降、事実上の自宅軟禁状態が続いていた。(共同)
(2009年2月6日21時36分 スポーツ報知)
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