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2009年02月05日(木) 00時00分

ヒトのiPSでマウス治療 脊髄損傷で世界初、慶大中国新聞

 あらゆる組織に成長できるヒトの新型万能細胞「iPS細胞」を使って、脊髄せきずい損傷で脚がまひしたマウスを歩けるまで回復させることに、慶応大の岡野栄之おかの・ひでゆき教授(生理学)らのチームが成功し、四日に同大で開かれたシンポジウムで発表した。

 岡野教授によると、ヒトiPS細胞の治療効果が確認されたのは世界初。交通事故やスポーツにより、背骨の中の神経が傷つく脊髄損傷は根本的な治療法がなく、iPS細胞は切り札として期待されている。

 チームは、京都大の山中伸弥やまなか・しんや教授が開発した手法で作ったヒトのiPS細胞から、神経細胞などのもとになる神経幹細胞を作製。脊髄損傷で後ろ脚がまひしたマウスの損傷部に約五十万個を移植した結果、約一カ月で、ほかの病気で死んだマウスを除き二十九匹すべてが歩いたり走ったりできるまでに回復した。

 実験には拒絶反応のない特殊なマウスを使い、脊髄損傷を起こしてから最も治療効果が高いとされる九日後に細胞を移植した。iPS細胞を使った治療では、がん化の恐れが指摘されているが、マウスにがんは見つかっていないという。

 今後はがんの問題に加え、実際に神経組織が再生しているかなどを解剖して確認し、来年春までにはサルでの実験を始める計画だ。

 岡野教授は「実際にヒトのiPS細胞の効果が証明できたことは価値がある。できるだけ早く臨床応用につなげたい」と話している。

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200902040315.html