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2009年02月05日(木) 13時47分

2月5日付 よみうり寸評読売新聞

 面と向かって、その人を罵倒(ばとう)したり悪口や中傷の言葉を口にするのはなかなかできない。それも根拠がないなら、なおのことだ◆が、事実無根の中傷でも、インターネットの匿名の書き込みだと、ためらいもなく暴言を浴びせることができるようだ。そんな集中砲火で、個人のブログが〈炎上〉する事件が目立ってきた◆警視庁がこの種の集団攻撃を摘発する。男性タレントの開設したブログに「人殺し」「死ね、犯人のくせに」などの書き込みが短期間に数百件も集中した事件で名誉棄損の容疑だ◆すでに容疑者の男女18人の自宅などを捜索、パソコンや携帯電話のデータを押収している。20年前の女子高生殺人事件に関与したと、いわれない中傷をした疑い◆インターネットの匿名性は悪をそそのかす魔力を秘めているようだ。透明人間にでもなったように、対面なら感じるはずの抵抗が失われる。だが、透明にはなり切れない。しっぽはつかまえられる◆この一斉摘発で〈ネット世界の暴力〉に歯止めがかかるといい。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/column2/news/20090205-OYT1T00456.htm